
「卵って本当においしい!しかも様々な機能があってお菓子作りに欠かせない!」多くの方がそう感じているでしょう。
しかし、昨今の卵不足により、これまでのように気軽に卵を使えない状況が生じつつあり、私たち食品メーカーや飲食業界にとって「卵の使い方」が大きな課題になっています。
こういった背景の中、卵不使用製品や卵に頼らずに卵らしい美味しさを実現する技術が注目され、卵不使用商品の開発が急速に進んでいます。
「卵不使用でも、本当に卵使用に近いスイーツができるのか?」そんな疑問が生じるかもしれません。
実は、素材や工夫次第で、卵不使用でも美味しいスイーツができるのです!
この記事では、そうしたスイーツの開発のコツについてご紹介していきます。
「卵不使用でも、卵使用スイーツに負けない品質で作りたい!」という意欲をお持ちの方は、是非ご一読ください!
目次
1.卵不使用スイーツが必要とされる理由
「卵がたっぷり入ったプリンもパンケーキもとても美味しい。だけど、卵不使用で本当に作れるの?」それはごもっともな意見です。
しかし、卵不使用又はなるべく卵の使用量を減らして作らなければ、これまでと同じ価格で同じ品質のスイーツを提供することが困難となり、やむを得ず値上げに踏み切る企業も増えています。
近年の物価高も合わせて、この状況が続けば、卵を使ったスイーツが高嶺の花になってしまう未来がやってくる可能性があります。
このような厳しい現状には、以下に挙げたここ数年の深刻な背景があります。
- 鳥インフルエンザによる卵の生産量低下
- 生産コストの上昇:鶏の飼料代、飼育施設管理費、卵の選別・パック詰めに使う機械の電気代など
これらの影響を受け、卵不足・卵の価格高騰が引き起こされ、従来のように大量に卵を使用することが困難な状況が起きています。
消費者に安定した価格で美味しいスイーツを届けるためにも、卵不使用の商品やレシピの開発が急務となっています。
参考 農林水産省_卵について、一般社団法人日本養鶏協会_鶏卵をめぐる情勢
2.卵不使用スイーツ成功の鍵|卵の役割とお助け食材
卵はお菓子作りの中で様々な役割を果たすマルチプレーヤーです。
卵の機能をすべて兼ね備えた食材は、現段階ではないと考えられます。
卵不使用スイーツを作るための成功の鍵は、まず卵が持つ機能性を理解し、別の食材で補うことです。
本章では、スイーツにおける卵の役割と卵の役割をサポートする食材を解説します。
2.1.乳化・粘度|生地の混ざりを良くし、なめらかに保つ
卵が持つ乳化作用と適度な粘度は、お菓子の生地を安定的に混ぜ合わせ、なめらかな質感を保つ働きをしています。
- 乳化:卵黄に含まれる「レシチン(細胞膜を構成する成分)」が、油分と水分を均一に分散させ混ざり合った状態にする
- 粘度:油滴を動きにくくし、合一(くっついて大きくなる)や分離を抑制する
上記の役割を補うために、以下の食材を紹介します。
| 役割 | 食材 | 働き |
| 乳化 | レシチン系(大豆、ひまわりなど)、豆乳、乳製品 | 乳化の働きがあり、風味への影響が少ない |
| ナッツバター(アーモンド、ピーナツ、練りごま) | 乳化を補助する | |
| ココナッツミルク、ココナッツクリーム | 生地の分離を抑制し、安定させる | |
| 粘度 | 多糖類(ペクチン、キサンタンなど) +タンパク質 |
多糖類同士の絡み合いやタンパク質との相互作用によって粘度が生まれる |
| 砂糖、シロップ(メープル、グルコース)、バナナ | 粘度を上げ、油滴の合一を抑制する | |
| オオバコの種皮 | 水分を含むと粘度が発生する |
生地の混ざりが良好だと、「作業性の向上」や「しっとりした食感」といった付随的な効果も得られます。
参考 日本食品科学工学会誌_第63巻第8号 2016年8月、第30巻 第2号 1983年2月、オレオサイエンス 第16巻第9号(2016)、日本調理科学会誌Vo1.38,No.3,281~285(2005)〔 市販にがりの品質 資料〕
2.2.凝固|固まって形を保つ
卵に多く含まれる「タンパク質」は加熱で固まり、食品を固めて形を保つ役割があります。
卵使用スイーツは、卵の凝固作用によって形が崩れにくくなっています。
卵以外にも、以下の食材が有効です。
| 食材 | 働き | 用途 |
| 寒天・アガー・カラギーナン | 加熱で溶解し、冷えると固まる | プリン、ムース、フィリング、カスタードクリーム |
| でんぷん系(コーンスターチ、片栗粉) | 加熱で糊化し、食材をまとめ、冷めると保形性が上がる | |
| ココナッツオイル・ココアバター・ココナッツクリーム・ナッツバター | 油脂を多く含み、冷えると凝固して形が崩れにくくなる | 焼菓子系(パンケーキ
、マフィン、ブラウニー、クッキーなど) |
| フラックスエッグ(すり潰した亜麻仁に水を混ぜたもの) | すり潰した亜麻仁は水分を含むとゲル化し、つなぎになる | |
| にがり | 生地中のタンパク質と反応すると凝固する | |
| 豆乳・大豆粉 | タンパク質が多く、加熱すると固まる |
2.3起泡性|空気を含ませる
卵不使用スイーツで一番苦労するのが「気泡」を保つことです。
ホイップした生地を作ることは可能ですが、加熱調理で膨らませた後、そのまま崩れずに固めるためには、発生した水蒸気をきちんと抱え込むことが必須です。
卵は優れた起泡性を持ち、生地に空気を含ませることができます。
これは、卵白を泡立てて作られる気泡が生地内に保持され、焼成中にその泡が膨張・固定されるためです。
注意:ただし、卵白は泡立てすぎると分離し、ぼそぼそと粗い状態になります。
特に、起泡性が成功の鍵を大きく握るスポンジケーキは、卵不使用で作ることが大変難しいスイーツです。
そこで、スポンジケーキ作りには「起泡性乳化脂」がよく使われます。
起泡性乳化脂は、泡を作りやすく・壊れにくくなるよう設計された食用加工油脂です。
空気、油、水の三者をうまく橋渡しして、生地のボリュームとキメを安定させ、ふっくらとしたスポンジケーキを仕上げることが可能です。
弊社では、起泡性乳化脂はもちろん、スポンジケーキにお試しいただきたい製品も取り揃えております。
くわしくは、3.2.章にてご紹介いたします。
また、「スポンジケーキが上手くできない」とお悩みの方は、別記事『スポンジケーキが膨らまない|研究員が教える失敗しない9つのコツ』をご参照いただくと、答えが見つかるかもしれません。
スポンジケーキの成功率を上げたい方は、是非ご一読ください。
参考 中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要 第46号 2014
2.4.風味|まろやかなコク・やさしい味わい
卵不使用スイーツでは卵の風味がないため、味をまろやかにし、美味しさを付与する素材を配合する必要があります。
また、卵不使用では素材の味や甘さを強く感じるため、砂糖の配合を抑えることも必要です。
お菓子で感じる卵の風味は一言で表しにくく、以下のような様々な食材を組み合わせながら、卵使用スイーツの風味の再現を目指します。
- ココナッツミルク
- ココナッツオイル
- ナッツバター
- ココナッツクリーム
- きなこ
- 白ねりごま
- バニラッセンス
- きび糖、てんさい糖 など
油脂を上手く使うことでコクの付与ができますが、風味の感じ方や起泡力を弱めることがあるため、入れすぎないように注意が必要で、使いこなすのは困難です。
弊社には、少量でコクや風味を引き出すことができ、お菓子作りに便利にお使いいただける製品がございます。
くわしくは、3.2章でご紹介いたします。
油脂とコクの関係についてご興味ある方は、別記事『コクとは何か?その正体とオススメ食材・調理方法をプロが解説!』をご参照ください。
油脂とコクのメカニズムを分かりやすく解説していますので、是非ご一読ください。
2.5.食感|しっとり柔らかくなる
卵が持つ水分保持力により、お菓子の乾燥を抑制し、柔らかさが維持され、口当たりも良くなります。
これは、卵黄による乳化力の働きが大きく影響しています。
卵黄の脂質が生地中に細かく分散し、表面や気泡壁に油性の薄膜を作るためです。
以下の食材は、保湿効果を期待できます。
- レシチン系(大豆、ひまわりなど)
- 水溶性食物繊維を多く含む食材(バナナ、リンゴピュレなど)
- 乳製品
- 豆乳
- 豆腐
また、油を上手く生地に混ぜ込むことも、お菓子をしっとりさせる効果があります。
弊社製品「フレトワ」は、しっとりとした食感に仕上がり、ソフトさを保ちます。
パサつきや硬化を抑制する効果があり、バターケーキなどやや長めの賞味期限の設定が期待できます。
2.6.見た目|黄色味・ツヤ
卵不使用スイーツでは、甘味や塩味が出すぎない範囲で配合しながら、卵由来の淡いクリーム色を狙って作ります。
使用する食材は、以下のものです。
- 色素系(カロチン、マリーゴールド、クチナシ)
- ターメリック
- パンプキンパウダ―
糖とタンパク質の反応(メイラード反応)で焼き色を付け、卵黄の黄色みに近づけることもできます。
スイーツを美しく仕上げるために卵黄を塗って焼成後にツヤを出しますが、卵不使用スイーツでツヤ出しをするには、以下の食材が使われます。
- 油、バター
- ナパージュ(液状のゼリー)
参考 東京家政大学栄養学科 峯木 眞知子_鶏卵の知識とおいしさ
2.7.卵白代用の代表格「アクアファバ」
卵白の代用品として、よく使用されるのが「アクアファバ」です。
アクアファバは、ひよこ豆などを煮た汁のことで、乳化・凝固性・起泡性の機能を持ち、以下のような特性があります。
- 粘性があり、泡立てるとメレンゲ状になる。
- 熱すると凝固する
- 味も卵白に似ている

マカロンやシフォンケーキなどをはじめ、様々な調理に使われており、卵を召し上がれない方に重宝されています。
参考 明治大院農・農化_様々な豆類の煮汁(アクアファバ)の起泡特性の評価と向上のための解析
3.卵不使用スイーツ作りに役立つ弊社製品をご紹介
「みんなが同じ食卓を囲んで美味しく楽しめる」そんな願いから、私たち開発者は卵不使用でも美味しい食品づくりに挑戦しています。
その中で、卵不使用スイーツや卵が足りないときに活用できる製品を紹介いたします。
3.1.卵の美味しさを表現した植物性カスタード「プラボカスター/MB」
弊社では、乳製品や卵などの動物性原材料を使用せず、植物由来のおいしさを追求したプラントベース製品ブランド「Poff」を展開しております。
Poffは、植物由来の力で、人にも地球にもやさしいおいしさを実現することを目指したラインナップブランドです。
Poffのひとつ「プラボカスター/MB」は、卵、乳製品を使わずに、卵や牛乳の美味しさを表現した植物性カスタードクリームです。
以下のように、様々な用途で便利にお使いいただけます。
- カスタードの代替として、スイーツのフィリングにそのまま使う

- プリンやエッグタルトなどの液生地に練り込み、卵のようなコクとなめらかな食感、そして黄色い色味を付与する

卵だけでなく、乳製品を使わないスイーツに対応可能な製品も取り揃えています。
詳細は、弊社プラントベース製品紹介ページをご覧ください。
また、卵不使用スイーツや、乳製品を使わないスイーツのレシピも多数開発しております。
「プラントベースアイテムセレクション」 と 「とっても簡単 プラントベースプリン11選(オクシタニアル中山シェフ監修)」 のダウンロードはこちら>>>
食品開発や生産ライン落とし込みにおけるお困りごとはお気軽に弊社までお問い合わせください。
3.2.卵不使用の最難関「スポンジケーキ」作りは「機能性油脂」で課題を解決
スポンジケーキ作りは、卵不使用スイーツの最難関と言えます。
なぜなら卵は、スポンジケーキにおいて、乳化・凝固・起泡性・風味・保水・食感といった多くの機能を同時に担う「超マルチプレーヤー」だからです。
卵不使用スポンジケーキ作りで、卵の代わりに他の原料で代用すると、以下のような課題が生じるケースが多くあります。
- 起泡力・乳化力・凝固力の低下
- 食感(口溶け)の悪化
そこで「機能性油脂」をお使いいただくことで、起泡力・乳化力・食感の改善が期待できます。
ここでは、卵不使用スポンジケーキの課題解決に役立つ、弊社の機能性油脂をご紹介します。
起泡力・乳化力の改善「起泡性乳化脂」
- クレマイーリス/MB
高い起泡力と気泡保護力で、ケーキ生地の歯切れや口ほぐれが向上する起泡性乳化脂です。
プラントベースに対応し、RSPO MB認証を取得しています。
通常商品はもちろん、海外輸出向け商品に使いやすい設計です。(※)
※使用食品添加物の輸出想定国・地域における適合性については、お問い合わせください。 - パホーマ―G
様々なタイプのスポンジケーキに対応でき、常温保存が可能なため、大変使いやすい製品です。
「一般的な業務用製品の容量では、使い切れず余ってしまう」とお悩みのお客様のために、小入目タイプ(5kg缶)もございます。
食感・口当たりの改善「機能性油脂」
- ゼノア
しっとり口当たりのよい生地を作ることができる液体油脂です。
油脂が生地になじみやすく、安定したスポンジケーキができます。 - クリアエール 菜種油
しっとり口当たりのよい生地を作ることができる食用油脂です。
また、弊社独自の精製技術により、素材の風味を引き立て、スポンジケーキだけでなく、幅広い分野でお使いいただけます。 - リラクリーム
パンや菓子のやわらかさ、歯切れ、口ほぐれ、口どけを向上させる機能性練り込みクリームです。
製菓分野において使用される油脂加工品は、実際にお客様から寄せられたお悩みや現場の課題をもとに開発されたものが多く存在します。
製菓製パンのお悩みは、お気軽に弊社にお問い合わせください。
参考 日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.)Vol. 53 No. 5(2020)
最後に
本来、卵が欠かせないスイーツでも、工夫次第で卵を使用せずに美味しいスイーツが作れること、またその方法についてお伝えしました。
この記事が、卵不使用スイーツでも卵使用と遜色ない美味しさを引き出し、卵不足でも安定してスイーツを消費者にお届けできるお手伝いになれば幸いです。
弊社が培ってきた開発技術や風味再現のノウハウは、メニュー開発に携わる方々の課題解決にもきっと役立ちます。
弊社にご相談いただければ、これまでにないオリジナル商品やメニューが開発でき、他社との差別化やブランド力強化にもつながります。
これからも弊社は、新たな価値創造のお手伝いをして参ります。
