食品分析のプロが教える!食品の安全を守る「水分活性(Aw)」とは

食品の日持ち設計において、腐敗やカビの発生リスクを予測することは極めて重要です。 
腐敗やカビの増殖には水が必要ですが、「水分量」の数値だけを見ていても、そのリスクを正確に測ることはできません。
例えば、同じ水分量であっても、糖度の異なるジャムでは腐敗の進行速度、日持ちが全く異なります。

ここで重要になる指標が、食品中の「微生物が利用可能な水」の割合を示す「水分活性(Aw:Water Activity)」(以降はAwと記載)です。
このAwを制御することは、保存料に頼らない日持ちの延長や食品ロスの削減にも直結します。

本記事では、品質管理や商品開発の担当者様に向けて、以下の内容を解説します。

・Awとは何か
・Awの計算方法
・Awの分析事例と活用方法
・分析の流れ

適切な「Aw」の管理手法を知り、商品開発や品質保持にお役立ていただけましたら幸いです。

1.水分活性(Aw)とは

第1章では、Awの基本的な考え方を学びましょう。
まず初めにAwを理解するうえで欠かせない「自由水」と「結合水」について理解を深め、続いて単なる水分量との違いや、微生物の増殖・日持ちとの関係を詳しく解説します。

1.1.自由水・結合水とは

Awとはなにかを学ぶ前に、知っておくべきワードとして「自由水」「結合水」があります。
分かりやすく説明していきます。

食品の中にある水は、すべてが「腐りやすさ」に関係しているわけではありません。
ポイントになるのが自由水、結合水の2種類です。

自由水と結合水のイメージイラスト

1.1.1.自由水とは

自由水は、その名の通り「自由に動ける水」です。

  • 0℃で凍る  
  • 100℃前後で沸騰して蒸発する  
  • 砂糖や塩など、いろいろな物質をよく溶かす

というような、普段私たちがイメージする“普通の水”に近い性質を持っています。
微生物(細菌・カビ・酵母など)が利用して増殖する原因となるのは、この自由水です。

1.1.2.結合水とは

結合水は、たんぱく質や炭水化物などの成分と強く結びついた「身動きが取りづらくなっている水」です。

  • 0℃でも凍りにくい  
  • 高温になっても蒸発しにくい  
  • 微生物がほとんど利用できない

というような特徴があります。

1.2.水分活性(Aw)とは

Awは、食品の中に「微生物が利用できる自由水」がどれだけ含まれているかを示す指標です。
Awが高いほど、微生物が増殖しやすくなるのでその食品の保存性は低下します。

Awは 0〜1.0 の数値(計算方法は後述します)で表され、  

  • Awが高い=自由水が多く、微生物が増えやすい状態  
  • Awが低い=自由水が少なく、微生物が増えにくい状態

を意味します。

ここで大事なのは、水分量そのものを見ているわけではないという点です。
同じ水分量でも、自由水と結合水の割合によって微生物の増殖速度は異なります。

  • 自由水が多い → Awが高く、微生物が増えやすい  
  • 結合水が多い → Awが低く、微生物が増えにくい

という違いが出ます。

たとえば、ジャムや練乳は水分量が多いですが日持ちします。
それは砂糖が自由水を抱え込んで結合水にするため、Awが低くなり、結果として腐敗しにくくなるからです。

このように、Awは「食品中の水のうち、微生物がどれだけ使えるか」を示す指標であり、水分量だけでは判断できない腐敗リスクや保存性を評価するために使われます。

1.3.微生物の増殖と水分活性(Aw)の関係  

食品の設計や保存条件を決める際には、Awをひとつの指標とすることがあります。
ここでは、細菌・酵母・カビが増え始めるおおよそのAwの目安を示します。

  • Aw 0.95〜1.00:細菌・酵母・カビが増えやすい  
  • Aw 0.90前後:多くの細菌は抑えられるが、酵母・カビはまだ増える  
  • Aw 0.70〜0.80:多くの微生物は増えにくいが、一部の菌には注意  
  • Aw 0.60未満:ほとんどの微生物が増殖できないレベル

Awと微生物の関係

Awを調整することで、「微生物リスクをどのレベルにできるか」の目安にすることができます。

(参照:水分活性について~食品の保存性パラメーター~,一般財団法人 日本食品分析センター, P2,3)

水分活性(Aw)に関するご相談・分析のご依頼はこちらから>>>

2.水分活性(Aw)の計算方法

Awを求める式は以下の通りです。

水分活性(Aw)=PP₀ERH(%)/100
P
:一定温度下での食品中の水の蒸気圧
P₀:一定温度下での純水の蒸気圧
ERH(%):平衡相対湿度(食品と空気中の水分のつり合いが取れて、安定している時の相対湿度)

Awは、「食品がどれだけ水蒸気を出そうとするか(=水蒸気圧)」を測ることで求められます。

純水では自由水がほぼ 100%です。
純水のAwは 1.00(= P₀/P₀)ですから、Awが 1.00 に近いほど自由水の割合が高いことを意味します。

水分活性の求め方

実際の測定では、試料を密閉容器内に入れ、その空間の平衡相対湿度を測定し、

 Aw = 平衡相対湿度(%) ÷ 100

として算出します。

また測定器を使用した場合には、試料を密閉容器内に入れ、その容器内の温度を一定に保ったうえで、
相対湿度(平衡相対湿度)を  センサーで読み取り、Awを求めます。

3.代表的な分析事例

①焼き菓子の日持ちの目安
②ジャムの糖配合違いの日持ち比較

単品で「絶対値」としてのスペック測定や、複数サンプル間での「相対的な差」の比較(例:ベンチマーク品〔開発や評価の基準(お手本)としている商品〕との比較、試作品同士のスペック比較)にも活用できます。

4.食品開発における水分活性(Aw)の活用方法

新しい商品を開発するとき、「どんな味・食感にするか」という要素に加え、「どこまで日持ちさせるか」という要素をあわせて考える必要があります。
Awを意識して開発に取り組むことで、感覚や経験に加えて、保存性とおいしさのバランスを科学的な視点でも捉えられるようになります

本章では、Awの活用事例についてご紹介します。

①「どこまで日持ちできるか」の目安にできる
目標とする賞味期限や、リスクとなる微生物(細菌・酵母・カビなど)に合わせて、目標のAwを設定できます。
保存性を高めるためにAwを低くしたいときは、水分をただ減らすのではなく、砂糖や塩、増粘多糖類などで結合水を増やし、自由水を減らすことで、Awの調整をすることができます。
また、Awを測定することで、微生物が増殖しにくい条件かどうかをあらかじめ判断できるため、試作品のスクリーニング段階では日持ちを調べる微生物検査を省略でき、開発期間や開発コストの削減にもつながります。

②製造の品質管理項目にできる
製造時、製品ごとに目標とするAw値を設定・管理することで、品質管理の1つとして活用することができます。

③トラブルの原因解明ができる
「カビが生えた」、「思ったより日持ちしない」といったトラブルが起こったときもAwを見れば原因追及の手助けになり、再発防止策も立てやすくなります。

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5.分析の流れ

Awの測定機械の写真

こちらは、当社が測定の際に使っている機械になります。
この章では、この機械を使ってどのようにAwを測定するのかについて説明します。

①測定したいサンプルを均一化する
クリームやジャムの場合は混ぜ合わせます。
お菓子やパンなどの固形物の場合はフードプロセッサーにかけて細かくします。

②サンプルカップに入れる
この時に気をつけたいのが入れる量です。
サンプルカップの約半分くらいまで入れます。
サンプルカップの内側壁面にサンプルが付着していると機械内部を汚してしまうので、綺麗にふき取りましょう。サンプルカップにサンプルを入れた写真

③サンプルカップをセットし、測定をスタートさせる
測定部を開け、サンプルカップをセットします。
測定部を閉めた後、レバーを左に倒すと測定がスタートします。

サンプルセットしてスタートするやり方

④5分程度で測定終了
今回はAw値が0.9619という結果が出ました。
自由水が多く、微生物が繁殖しやすい状態です。
日持ちさせる必要がある場合は、日持ち向上剤を入れたり、賞味期限を短めに設定するなどの工夫が想定できます。

サンプルカップにセットすれば、このように簡単にAwを測定することができます。
短時間で測定することができますので、ぜひ開発に役立ててください。

6.よくある質問

当社がお客様からお問い合わせいただく、よくあるご質問をまとめました。

Q1.測定が可能な食品は?
A.基本的にほとんどの食品で測定可能です。

Q2.測定に必要なサンプル量は?
A.目安として約20gご用意ください。

Q3.分析にかかる時間は?
A.1サンプル当たり、約10分です。

Q4.測定装置の価格は?
A.おおよそ10万円前後から100万円以上のものまで価格には幅があります。
測定条件(測定範囲・温度制御・測定スピードなど)や求める精度を考えて、機種を選定することが重要です。

Q5.測定をしてAwの結果が出ましたが、この数値ではどのくらい日持ちしますか?
A. 日持ちは、Awだけでなく、水分量、原料(保存料など)、アルコール製剤の有無、包材など多くの要因で変わります
Awはあくまで目安の指標(1.3.の一覧表を参照)と考え、必要に応じて微生物試験を行い、実際の販売形態に応じた日持ちを確認してください。

みなさまがAwを測定する際の、ご参考にしていただければ幸いです。 
またお困りのこと・疑問点などありましたら、弊社営業担当者またはお問い合わせフォームよりご相談ください。

 

 

7.最後に

水分活性(Aw)は、「どれだけ微生物が使える水があるか」を示す、食品の安全性・日持ち設計に直結する指標です。
水分量だけでは見えない腐敗リスクを数値で把握することができるため、以下のことが可能となります。
①「どこまで日持ちできるか」の目安にできる
②製造の品質管理項目にできる
③トラブルの原因解明ができる

Awは、「おいしさ」と「安全性」のバランスを科学的な根拠にもとづいて配合(レシピ)決定の一助となってくれる強い味方です。
ぜひ、食品開発に活用してみてください。