
「メイラード反応」という言葉は、調理や食品開発の仕事をしているとよく耳にします。
焼き色や香ばしい香りのもとになる反応ですが、「仕組みはよくわからない」「どうやってコントロールするの?」と思っている方もいるかもしれません。
この記事では、メイラード反応の基本を分かりやすく説明し、反応を進める条件・抑える条件、現場で使えるコツまでをご紹介します。
読み終えるころには、メイラード反応がいつ、どのように起きるのか(温度、時間、水分、pH、使う糖やアミノ酸の種類など)を理解でき、狙った焼き色や香りを引き出す方法、逆に不要な褐変を防ぐ方法がわかります。
ぜひご一読ください!
目次
1.メイラード反応とは
メイラード反応は、食品に含まれるアミノ酸(またはタンパク質)と還元糖が、加熱によって反応して色や香り、味を生み出す現象をいいます。

ちなみに還元糖とは、砂糖やブドウ糖などの「糖」のうち、ブドウ糖、果糖、乳糖などを指します。
これらの糖は構造が変化してアルデヒド基やケトン基という構造を持つことで、還元という化学反応を起こしやすい性質があります。


メイラード反応では、最初は糖とアミノ酸が結びついてできた物質が、やがて加熱に応じて分解や組み替えが進み、様々な物質が発生していきます。
これらの物質はパンのトーストの焼き色、コーヒーやチョコレートの香ばしさ、味噌や醤油の風味などに強く関わりますが、本章では食品の色と香りの変化に焦点を当てて解説をします。
1.1. 色の変化
メイラード反応が進むと、はじめは目立たなかった色が少しずつ濃くなり、やがてきつね色から濃い褐色へと変化します。
最終的にはメラノイジンという褐色の物質が多くできて、見た目がはっきり変わります。
写真は、アミノ酸と糖を混合して加熱した溶液で、本記事でメイラード反応を分かりやすくお伝えするために調整したものです。

こうした色の変化は元の食材の成分(糖やアミノ酸の種類)の影響を受けますが、温度、水分、pH(アルカリの方が反応は進みやすい)、加熱時間にも左右されます。
例えば、高温で食材の水分が抜けると表面温度が上がり、短時間で色づきます。
トーストの表面やステーキの焼き面、ロースト野菜は、表面が乾きやすいのできれいに褐変しやすくなります。
一方で、煮物のように水分が多い料理では表面温度が100℃前後に保たれやすく、色づきはゆっくりであり、穏やかな仕上がりになります。
また同じ食材でも厚み、表面積、油の量、フライパンやオーブンの蓄熱などで色の出方が変わります。
ねらいの色に合わせて、よく予熱した道具を使い、食材の表面を軽く乾かし、詰め込みすぎずに加熱するなどの工夫が効果的です。

1.2. 香りの変化
メイラード反応が生じた食品は、ナッツのような香ばしさやローストした香り、肉らしい香り、キャラメルのような甘い香りが重なって感じられます。
これには、ピラジンやフランと呼ばれる多くの香り成分が関係しています。
また、穀物の香ばしさや焼けた肉の香りにはアルデヒドと呼ばれる成分が関係しています。
いずれも反応した糖やアミノ酸が分解することで発生するのですが、これらの香りは食品のアミノ酸の種類を反映します。
例えば、硫黄を含むアミノ酸(システインやメチオニン)があると、力強い香りが増えます。
玉ねぎ、にんにくや肉などはこういったアミノ酸を含むため、食欲をそそる香りを生み出し、短時間でも香りが立ち上がりやすくなります。
ただし、加熱しすぎると焦げ臭や苦味につながる成分が増え、重たく、くぐもった印象になります。
良い香りのピークで火加減を落としたり、加熱方法を変えたりして、狙ったところで止めることが重要になります。
1.3.コクの付与
コクは美味しさを支える重要な要素ですが、メイラード反応は食品のコクに大きく関係します。
ヒトは食材の風味が複雑である(厚みがある)とよりコクを感じられる傾向にあります。
メイラード反応は、糖とアミノ酸が反応することで多種多様な成分が発生するので、加熱調理を経た食品が好まれるのは、メイラード反応によるコクの増強に要因があると言えます。
コクに関する詳しい内容は別の記事にもまとめていますので、ご確認ください。
コクとは何か?その正体とオススメ食材・調理方法をプロが解説!>>>
1.4. 炭化(焦げ)・カラメル化との違い
メイラード反応は、糖とアミノ酸が一緒に反応して色や香りが生じる現象です。
これに対してカラメル化は、糖だけが高温で分解や結合を繰り返す反応で、砂糖を熱してできるキャラメルの色と香りが代表例になります。
カラメル化は一般に160℃以上で進みやすく、アミノ酸を必要としません。
炭化(焦げ)は、加熱が進みすぎて食品の成分が分解され、黒くなって苦味や焦げ臭が強く出る状態をいいます。
これはメイラード反応やカラメル化の先にある段階で、たいていの場合は望ましくありません。
香ばしさや焼き色を出したいときはメイラード反応を中心に狙い、砂糖の風味を強く出したいデザートではカラメル化を活かし、黒く苦い焦げに進まないように時間と火力を管理します。

2.メイラード反応を決める条件
メイラード反応の進み方は、温度、水分の少なさ(乾き具合)、pH、時間に加えて、金属の存在などに左右されます。
本章では、これらの要因についてより詳細に解説します。
2.1. 温度・水分
温度は最も影響が大きく、表面温度がおよそ120〜180℃に達するとメイラード反応がはっきり進みます。
一方で水分が多いと表面温度が100℃近くにとどまりやすく、色づきが遅れます。
そこで、フライパンやオーブンを十分に予熱し、食材の表面を軽く乾かし、油で熱伝導を良くすると効果が出ます。
冷蔵・冷凍した食材は、内部の温度が低いと加熱ムラの原因になるため、しっかりと常温に戻します。
厚手の器具は温度が下がりにくく、連続して焼いても安定した仕上がりになります。
また、ふたをすると蒸気がこもりやすいので、焼き色をつけたい場面では外して水分を逃がします。
また、器具に食材を詰め込みすぎず、ひっくり返す回数を減らすと、表面温度が下がりにくくなります。

2.2. pH
pHは反応の速さに影響し、弱アルカリ側では速く、酸性側では遅くなります。
焼き色を強くしたい時に重曹を少量加える方法がありますが、入れすぎると石けんのような風味や灰色っぽい色になりやすいので注意しましょう。
逆に酸性の食品であるレモン汁や酢、ヨーグルトを加えると、メイラード反応が起きにくくなります。
香りや色づきが控えめになるため、さわやかな風味にしたい場合に有効です。
なお、パン作りでは発酵でできる有機酸によってpHが変化する場合もあります。
焼き色と香りが異なる場合は、発酵条件の違いによるpHの影響を考慮しましょう。
2.3. 時間
メイラード反応では時間の進行に伴って香りと色が段階的に変化します。
初期には軽い香ばしさが出て、次にロースト感や肉らしさが強まり、さらに進むと色が濃くなって苦味が出やすくなります。
おいしさのピークで加熱を止めるために、仕上がり具合を見た目や香りで判断しましょう。

また、メイラード反応は調理以外の時間でも緩やかに進行するので注意が必要です。
食材の長期保存を行った場合、意図しない褐変が生じる場合があります。
2.4. 金属
鉄や銅などの金属イオンは、メイラード反応の進行を早める働きがあります。
そのため、ステンレスやテフロンでコーティングされた器具より、鉄や銅製のほうが焼き色が強く、はっきりと付きます。
また茹でや蒸しなどの水を使った調理の場合、水中の金属イオンが影響を与える場合があります。
日本の水道水は金属イオンの少ない軟水が一般的ですが、水の硬度はメイラード反応に影響します。
よって、ミネラルウォーターを用いる場合は水道水と異なる色や風味になる場合があります。
3.メイラード反応に関連する月島食品の製品
月島食品は、メイラード反応から生まれる風味を底上げする素材や、逆に意図しないメイラード反応を抑える素材を販売しています。
本章では、そういった製品をご紹介し、具体的な使用シーンについて解説します。
3.1.リッチエール
1.3.でも軽くご紹介しましたが、多様な成分に由来する複雑な風味はコクの重要な要素です。
さらに最近の研究では、こうした風味が持続的に感じられることがコクにとって重要であることが明らかになっており、油脂は風味の持続性をもたらす重要な素材です。

リッチエールは、見た目や性状は一般的な植物油脂と同様でありながら、月島食品独自のRTI製法により、通常の油脂よりも風味の持続性を大幅に高めています。
そのため、メイラード反応で生まれるコクを、よりいっそうリッチに引き立てます。
例えば炒め物にリッチエールを使えば、香ばしい風味をより長く持続させるような仕上がりになります。
またメイラード反応に由来するチョコレートの風味も、リッチエールを加えることでより豊かになります。
メイラード反応の風味を引き出したいけれど、加熱や使用量に制約がある場合に、ぜひお試しください。

3.2.レトスター
メイラード反応による褐変は、ホワイトソース等の白さが重要な食品の場合、見た目を損なってしまいます。
練り込みクリームであるレトスターは、メイラード反応を起こす原料を可能な限り少なくした設計で出来ており、レトルト処理のような高温で長時間加熱されるような条件でも、褐変が起きづらい製品です。
さらに乳化破壊、たんぱく質の凝集を起こしにくいことから、白さを求めるレトルト用ホワイトソースのベースクリームに最適の練りこみクリームです。
また、耐酸性にも優れているので、酸性素材を使用した杏仁豆腐やゼリーに使用できます。

最後に
メイラード反応は食品の「色・香り・コク」に大きな影響を与えますが、温度や水分、pH、時間等の条件を見極めれば、狙った焼き色や香ばしさを安定して再現でき、不要な褐変も最小限にコントロールできます。
また、先にご紹介したリッチエールやレトスターといった素材で、お客様の食品開発をサポートすることも可能です。
本記事によって、皆さまのものづくりが、おいしさと品質の安定を両立する一助になれば幸いです。
参考:
焼いたスイーツとメイラード反応
メイラード反応と着色・褐変 糖とアミノ酸が反応すると茶色くなる化学
食品におけるメイラード反応
