
パンやクッキー、ビスケットなどの商品の裏面表示で見かける「ショートニング」。
この「ショートニング」とは何なのか気になったことはありませんか?
ショートニングには、心疾患などに影響があると言われているトランス脂肪酸が含まれているとの情報があり、ショートニングが使用された食品を食べることに不安を感じている方もいらっしゃると思います。
本記事では食用加工油脂メーカーでショートニングの開発を担当する筆者がショートニングについて解説していきます。
この記事を通じてショートニングを正しく理解し、安心してショートニングが使用された食品を召し上がっていただければと思います。
1.ショートニングとは?
1.1.ショートニングとは「ほぼ油脂100%」
ショートニングは簡単にいうと「ほぼ油脂100%」でできているものです。
厳密にいうとショートニングは日本農林規格(JAS)において以下のように定義されています。
ショートニング
食用油脂(食用植物油脂の日本農林規格第2条に規定する香味食用油を除く)を原料として製造した固状又は流動状のものであって,可塑性,乳化性等の加工性を付与したもの(精製ラードを除く)
また水分にも規定があり、
水分(揮発分を含む)は0.5 %以下とする。
水分は「0.5%以下」と定められており、
このことから本記事ではショートニングを「ほぼ油脂100%」と表現しています。
ちなみにですが、ショートニング(shortening)という言葉は英語で『サクサクさせる、ポロポロにする』という意味を持っており、元々は「ラード(豚脂)」の代替として開発されたものです。
~補足~ 日本農林規格(JAS)
国内市場に出回る農林⽔産・⾷品の品質や仕様を⼀定の範囲・⽔準に揃えるための基準として農林水産大臣が定める国家規格です。
マーガリンの他にも様々な食品で基準が存在しており、JASの対象となる品目は飲食料品、油脂、農産物、林産物、畜産物、水産物などがあります。
1.2.ショートニング、マーガリン、バター各々の違いは?
お菓子やパンのレシピなどでショートニングがない場合はマーガリンやバターで代用してもよいと書かれていることがあります。
しかし、ショートニングとマーガリン、バターの違いは何なのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらの大きな違いは2つあり、原料油脂の違い、および油脂と水分の比率になります。
この違いを簡単にまとめた表がこちらになります。
| ショートニング | マーガリン | バター | |
|---|---|---|---|
| 原料油脂 | 食用油脂 | 食用油脂 | 生乳由来の乳脂肪 |
| 油脂含有率 | ほぼ100% | 80%以上 | 約80%前後 |
| 水分 | 0.5%以下 | 17%以下 | 17%以下 |
それでは詳しく解説していきます。
1.2.1.ショートニングとマーガリンの大きな違いは油脂と水分の比率
ショートニングとマーガリンの大きな違いは油脂と水分の比率になります。

マーガリンの油脂含有率80%以上、水分17%以下とJAS規格で定められています。
また、ショートニングは油脂含有率ほぼ100%、水分0.5%以下になります。
出典:マーガリン類|JAS規格、ショートニング|JAS規格
このように油脂と水分の比率がショートニングとマーガリンでは大きく異なります。
1.2.2.ショートニングとバターの違いは原料油脂と油脂と水分の比率
ショートニングとバターの一番の違いは原料油脂になります。

マーガリンやショートニングは食用油脂、主に植物油脂が主要な原料油脂であるのに対し、バターは生乳から作られるため、生乳由来の乳脂肪が原料油脂になります。
また、ショートニングとバターでは油脂と水分の比率も異なります。
ショートニングは油脂含有率ほぼ100%、水分0.5%以下であるのに対し、一般的なバターは油脂含有率約80%、水分17%以下と大きく異なります。
1.2.3.ショートニング、マーガリン、バターの違いを比較
ショートニング、マーガリン、バターをいくつかの項目で比較してみました。
| ショートニング | マーガリン | バター | |
|---|---|---|---|
| 原料油脂 | 植物や動物の食用油脂 | 植物や動物の食用油脂 | 生乳や牛乳由来の乳脂肪 |
| 油脂含有率 | ほぼ100% | 80%以上 | 約80%前後 |
| 水分 | 0.5%以下 | 17%以下 | 17%以下 |
| 風味 | 基本的に無味無臭 | 副原料によって様々な味を表現できる | クリーミーで独特のコクがある |
| 用途 | 製菓製パン、揚げ油 | 製菓製パン、パンに塗る、料理全般 | 料理全般、製菓製パン、パンに塗る |
それぞれの用途も少しずつ異なっており、これらを使い分けることでよりおいしい食品が出来上がっていきます。
あわせて、マーガリンについて解説した記事、「マーガリンとは何か?|メーカー研究員が定義から解説!」もご覧ください。
月島食品のショートニングのご紹介(コーポレートサイトに遷移します)>>>
月島食品グループの製品カタログのダウンロードはこちらから>>>
2.ショートニングは何に使われている?
この章ではショートニングがどのような食品の材料として使われているのかを紹介していきます。
2.1.パン
多くの「ソフトなパン」には油脂が入っています。
食パンであれば4%、ロールパンでは9%程度油脂が入っています。
その油脂の選択肢としてショートニングが使われる場合があります。
出典:食品成分データベース|穀類/こむぎ/[パン類]/角形食パン/食パン、
食品成分データベース|穀類/こむぎ/[パン類]/ロールパン
なぜパン生地に油脂を入れるのかというと、油脂を添加することで生地の伸展性が良くなり、パン酵母の発酵によって生じたガスの保持力を高めてくれます。
これにより、パンの容積を大きくすることができます。
見た目に大きいパンの方が食欲をそそられますよね。
また油脂を添加することでパンの水分が蒸発するのを防ぎ、パンが固くなってしまうのを防止してくれます。
これによって、パンの賞味期限を延ばすことができるのです。
このほかにも様々な利点があるため、スーパーやコンビニで見かけるパンの多くにはショートニングやマーガリンといった形で油脂が使われています。
パンにおける油脂の役割について詳しく知りたい方は「パンにおける油脂の役割は?油脂を知って食感や味をコントロール!」をあわせてご覧ください。
参考文献:新しい製パン基礎知識(パンニュース社)
2.2.クッキーやビスケット
クッキーやビスケットには必ずと言っていいほどショートニングなどの油脂が使われています。
油脂を添加することで生地のグルテン形成を抑制し、サクサク、ザクザクといった脆く、砕けやすい食感を生み出すことができます。
油脂を入れずにクッキーを作るととても固い食感のクッキーになってしまいます。
一般的にショートニングを使用するとサクサクとした軽い食感を付与し、一方でマーガリンを使用するとザクザクとした大きくほぐれる食感を付与します。
2.3.揚げ油
ショートニングには揚げ物用の油として使われるものもあります。
ポテトチップスなどのスナック菓子、ファストフード店のポテトやドーナツなどはショートニングを加熱して揚げ油として使用しているものが多くあります。
常温で固体のショートニングを使う理由としては、揚げ物が冷めた際にショートニングが固まるため、冷めてもべちゃっとした状態にならず、揚げ物の食感を維持してくれるためです。
特にドーナツではショートニングを使うことで衣がけした砂糖(粉糖やグレーズ)が溶けてしまうのを防ぐこともできます。
2.4.フィリングの原料として
ウエハースのサンド用クリームに用いられるホイップタイプの無水クリームや、クッキーのサンドクリームとして用いられるメルトタイプの無水クリームは、ショートニングが使用されます。
これらの用途では、日持ちすることが最重要課題となるため、水を含まないショートニングを選択し、粉糖や粉乳等の粉末素材と香料等を合わせてフィリングを作ります。
無水タイプの各種クリームに関する解説とレシピの詳細は「バタークリームの作り方が分かる|種類別に分かりやすく解説」を合わせて御覧ください。
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3.ショートニングは体に悪い?
「ショートニングは体に悪い」や「ショートニングは危険」などといった話を聞いたことはありませんか?
しかし、適正量の摂取であれば問題はありません。
本章ではショートニングが体に悪いと言われてしまっている原因である、脂質とトランス脂肪酸に焦点を当てて解説していきます。
3.1.ショートニングは適正量の摂取であれば問題ない
こちらはショートニングの100gあたりの栄養成分になります。
| 100gあたり | |
| エネルギー | 889kcal |
| たんぱく質 | 0.0g |
| 脂質 | 99.9g |
| 炭水化物 | 0.0 |
食品成分データベース|油脂類/(その他)/ショートニング/家庭用
脂質の1日の摂取基準は摂取カロリーの20~30%が目標とされています。
日本人の食事摂取基準|厚生労働省
そのため摂取カロリーが1日2000kcalの場合、脂質から摂取する目標カロリーはMAXで600kcalです。
脂質は1gあたり9kcalですので1日で脂質を約67gの摂取することが目安になります。
ショートニングはそのままの形で日常生活で摂取することはほとんどないと思います。
ですのでショートニングなどの油脂が多く含まれる食品としてクッキーで考えてみたいと思います。
一例にはなりますが、食品成分データベースのクッキー(ソフトビスケット)の成分を参考にしました。
その結果クッキー1枚当たり2.2gの脂質が含まれていることがわかります。
| クッキー100g当たり | クッキー1枚あたり(8g) | |
| エネルギー | 512kcal | 41g |
| たんぱく質 | 5.7g | 0.5g |
| 脂質 | 27.6g | 2.2g |
| 炭水化物 | 62.6g | 5.0g |
1日クッキーだけを食べたとすると31枚食べると1日の脂質摂取量をオーバーしてしまいますが、31枚食べるのはあまり現実的ではないと思われます。
そのためクッキーのみで脂質の過剰摂取になる可能性は少ないでしょう。
ただし、クッキーは間食で食べる方が多いと思いますので、一日の食事の内容によっては脂質の過剰摂取になる可能性があります。
バランスの良い食事を心がける必要がありそうです。
3.2.ショートニングのトランス脂肪酸量は減少している
「ショートニングやマーガリンはトランス脂肪酸を多く含んでいるから体に悪い!」という話を一度は耳にしたことがあると思います。
下の表は農林水産省の「食品中のトランス脂肪酸濃度」に関する調査をもとに100gのショートニングのトランス脂肪酸量を各年度で比較した表になります。
| トランス脂肪酸量(g/食品100g) | ||
| 平成18・19年度調査 | 平成26・27年度調査 | |
| ショートニング | 12g | 1.0g |
出典:平成18・19年 食品中の脂質及びトランス脂肪酸の濃度|農林水産省、
平成26・27年 食品中の脂質及びトランス脂肪酸の濃度|農林水産省
平成18・19年度と平成26・27年度を比較するとショートニングのトランス脂肪酸量はかなり減少していることがわかります。
これは、2000年代初頭から食用加工油脂メーカーの企業努力や技術革新によって油脂の加工方法や原材料の見直しが行われたことによるものです。
その結果、ショートニングのトランス脂肪酸量は大幅に低減されています。
「トランス脂肪酸が多いからショートニングは危険だ」という話は、現在では誤りであるとをご理解いただけたのではないでしょうか。
そうはいえ、実際にどれくらいの量のショートニングを食べると危険なのでしょうか?
WHO(世界保健機関)は、人々の健康の増進のために、トランス脂肪酸の摂取量を総カロリーの1%以下にするよう推奨しています。
総エネルギーの1%のトランス脂肪酸の量は、年齢や性別などにより異なりますが、一日あたりの摂取総カロリーを2000kcalと設定した場合は1日当たり2.2gに相当します。
この基準をクッキーに当てはめて考えてみましょう。
クッキーには1枚(8g)あたり約0.015g含まれています。
出典:平成26・27年 食品中の脂質及びトランス脂肪酸の濃度|農林水産省
1日にクッキーだけ147枚食べるとトランス脂肪酸の摂取量は2.2gを超過し、WHO(世界保健機関)が推奨する1日あたりの摂取量の目安を超える事になりますが、これは現実的に食べる量ではないですね。
ただし、一日の食事で脂質の摂取量が多い場合は、結果的にトランス脂肪酸の摂取量も多くなる傾向となりますので食事のバランスには気を付ける必要がありそうです。
トランス脂肪酸について詳しく解説した記事「トランス脂肪酸とは?研究員がわかりやすく解説!」、「知らないと損する!? トランス脂肪酸の真実と、安心して食事を楽しむコツ」も合わせてご覧下さい。
4.ショートニングの原料は?
本章ではショートニングの原料について解説します。
下に示しているのは市販されているショートニングの原材料表示の一例です。
|
原材料名
|
食用植物油脂、食用精製加工油脂/ 酸化防止剤(V.E)、乳化剤、香料、(一部に大豆を含む) |
|---|
一般的に原材料表示の「/」以前に記載されている原料は食品であり、「/」以降に記載されている原料は食品添加物です。
次項からはショートニングに使用される食品と食品添加物それぞれについて解説していきます。
4.1.食用油脂
ショートニングの原料のうち、大部分を占めるのが食用油脂になります。
食用油脂は植物油脂、動物油脂、食用精製加工油脂に分けることができます。
植物油脂と動物油脂はそれぞれ文字通り、原料が植物または動物である油脂のことを言います。
また、食用精製加工油脂は植物油脂や動物油脂を原料として加工を行った油脂である、硬化油、エステル交換油、分別油のことを言います。
| 植物油脂 | 動物油脂 | 食用精製加工油脂 |
|---|---|---|
| 大豆油、菜種油、パーム油など | ラード、牛脂など | 硬化油、エステル交換油、分別油 |
このような様々な種類の食用油脂を組み合わせてショートニングは作られています。
☆食用精製加工油脂について詳しく知りたい方は「食用精製加工油脂とは?その正体と役割について解説」をご覧ください。
4.2.食品添加物
ショートニングでは食用油脂以外に食品添加物が使用される場合があります。
食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものになります。
出典:食品添加物|厚生労働省
中でもよくショートニングで使用される以下の2つについて説明します。
4.2.1.乳化剤
乳化とは本来混ざり合わないもの同士が、どちらか一方に分散し、均一な状態となっていることを言います。
この「乳化を媒介し保持する機能を持つ」食品添加物が乳化剤になります。
ショートニングは油脂ほぼ100%であるため乳化する必要がないにもかかわらず、乳化剤を入れる理由は以下の2つが挙げられます。
①油脂の結晶化を調整することで優れた可塑性を付与する
可塑性とは固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質のことを言います。
粘土のような、「力を加えることによって、自在に形が変えられるやわらかさ」をイメージするとわかりやすいでしょう。
②食品に加えた際の乳化状態を改善するため
乳化剤をパンやケーキなどの生地に入れると生地の乳化状態や焼き上がった後の食感を改善するため、パン用やケーキ用のショートニングに乳化剤が配合されることがあります。
4.2.2.酸化防止剤
ショートニングに酸化防止剤を入れる理由は、油脂の酸化による腐敗臭、色合いの変化、粘度上昇などの品質の劣化を防ぐためです。
よく使われるのはビタミンEになります。
4.3.その他(窒素ガス)
その他には原料ではありませんが、窒素などのガスを入れる場合があります。
ガスを入れる理由はショートニングを柔らかく使いやすくするためです。
配合する油脂によってはとても固く、使いづらいことがあるため、ガスを入れることでカチカチに固まってしまうことを改善します。
5.ショートニングの製造は大きく5工程
4章で説明した原料を使ってどのようにショートニングが製造されるのかを解説します。
ショートニングは以下の工程を経て製造されます。

基本的にはマーガリンの製造工程とほとんど同じ工程を経ており、
①原料の計量、②混合、③急冷練り合わせ、④充填、⑤検査の大きく5つの工程からなります。
5.1.原料の計量
4章で紹介したような原料を計量します。
ショートニングの原料例は次のようなものがあります。
【ショートニングの原料例】
・油脂
・乳化剤
・酸化防止剤
・香料
など
原料をレシピ通りに計量し、製造することで安定した品質のショートニングが作られます。
5.2.混合
油脂の中に乳化剤などの他の原料を投入し、混合していきます。
温度は乳化剤などをよく溶かすため、60℃以上の高い温度に設定されています。
この時、均質な状態にするために攪拌しながら溶かしていきます。

5.3.急冷練り合わせ(ない場合もある)
種類によっては冷却しながら、練るという工程があります。
筒状の冷却機の中を通過する際に、外側に流れる冷媒によって冷やされます。
冷えた部分をかき取り羽でかき取ることで均一に冷やされていきます。
このように急冷することでショートニング中の油脂が結晶化し、さらに練ることでショートニングの柔軟性や展延性を生み出します。
急冷でないと、油脂の結晶がやや粗くなるため、ザラザラとしたショートニングになってしまいます。
ショートニングの種類によってはこの急冷練り合わせ工程の前に窒素などのガスを注入する場合もあります。
5.4.充填
急冷練り工程または混合工程を経て、ペースト状又は流動状になったショートニングは様々な容器(カップ、段ボール、缶など)に充填されます。
充填直後は流動性を持っていますが、数日経つと固まっていきます(常温でも流動状のショートニングを除く)。

5.5.検査
出来上がったショートニングは様々な検査が行われています。
充填後に異物が混入していないかを金属探知機などで確認しています。
また、含まれる成分が間違っていないか(理化学検査)、変な味や香りがしないか(官能評価)も確認しています。
様々な検査を行うことで安全性を確認し、お客様の元へ出荷されます。
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6.さいごに
本記事ではショートニングについて詳しく解説しました。
様々な食品の裏面表示で目にする「ショートニング」ですが、この記事を通じてショートニングについて理解を深めて頂き、食品開発の現場でも安心して活用していただけたらと思います。
