トランス脂肪酸とは?研究員がわかりやすく解説!

はじめに

「トランス脂肪酸」という言葉、一度は耳にしたことはありませんか?

「健康に悪いらしいけれど、実際どういうものかわからない…」

そんなイメージの方も多いはずです。

そこで本記事では、「トランス脂肪酸を日本一わかりやすく解説する」という目標のもと、専門用語をなるべく使わず、一般消費者の方から食品開発担当者の皆様まで、どなたでも直観的に理解できるよう丁寧に解説します。
主なポイント

  • トランス脂肪酸とは何か?
  • 体への影響
  • 健康な食生活のために気をつけること

の順に解説します。

最後までお読みいただければ、これまで何となく抱いていた「不安」がやわらぐはずです。

1.トランス脂肪酸とは何なのか?

トランス脂肪酸という言葉を聞いても、どんなモノなのか想像できませんよね…

トランス脂肪酸を一言であらわすと、「少しカタチの変わった脂肪酸」と言い換えることができます。

しかし、「カタチが変わるってどういうこと?」「そもそも脂肪酸って何?」と疑問の方もいるはずです。

ここでは、トランス脂肪酸の正体を知るため、「トランス」と「脂肪酸」の意味をそれぞれ分けて解説します。順序としては、「脂肪酸」を理解した方が全体のイメージをつかみやすいため、「脂肪酸」の説明から始めます!

1.1.「脂肪酸」とは

脂肪酸とは、私たちが食べる「油」のもとになる成分です。私たちは、脂肪酸を活用することで、体を動かすのに必要なエネルギーを獲得します。

油脂について

脂肪酸は、一本の棒にボールがたくさんささったような形をしています。ちなみにこのボールは、炭素と水素という原子によってできています。(厳密にいうと、片端のボールのみ酸素原子も含みます。)脂肪酸について

そして脂肪酸の形には、色々な種類があります。

えば、液体の油(サラダ油やオリーブオイルなど)の脂肪酸は、「く」の字に曲がった形をしているものが多いです。この曲がり方を、「シス型」と呼びます。「く」の字の脂肪酸は脂肪酸同士にすき間ができやすく、固まりにくいため常温でも液体となります。

1.2.「トランス」とは

さて、トランス脂肪酸の「トランス」とは、シス型とは違う曲がり方を指します。トランス型の脂肪酸も折り曲がっているのですが、「く」の字ではなく、ほぼ真っすぐに伸びています

トランス脂肪酸について

こういったまっすぐな脂肪酸は、脂肪酸同士が密に並ぶことができますので、常温で固まりやすい特徴があります。ですので、トランス脂肪酸も常温で固体となります。

1.3.なぜトランス脂肪酸はできるのか?

ちなみに、スーパーで売られているサラダ油などの植物油脂には、ほとんどトランス脂肪酸は含まれていません。では、どのような油脂にトランス脂肪酸は含まれるのでしょうか?

前章で述べたように、トランス型もシス型も、脂肪酸を作る一つ一つの要素は変わりません。違うのは曲がり方だけですですので、針金の棒に力をかけたら曲がるように、これらの脂肪酸は入れ替わることができます。例えば、シス型に熱を加えると、一部はトランス型に変わってしまいます。シス型かたトランス脂肪酸への変化逆にシス型からトランス型の変化に比べて、トランス型からシス型への変化は起きにくいです。ですので、一部の食品はトランス脂肪酸が多くなってしまうことがあり、マーガリンはその代表例でした。

かつてはマーガリン用に油を固く調整するため、「硬化」という工程が行われていました。この工程でトランス脂肪酸が生成されやすかったため、マーガリンはトランス脂肪酸を多く含む食品として知られるようになったのです。

しかし現在では、トランス脂肪酸の少ない油脂を使用する製法が業界全体で一般化しています。

現在市販されているマーガリンのほとんどがトランス脂肪酸の低減タイプとなっており、安心してお召し上がりいただけます。

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2. トランス脂肪酸はどうして身体に悪いのか

トランス脂肪酸が身体に悪いとされるのは、体内の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすためと考えられています。

ちなみに悪玉コレステロールですが、これは名前の通りに身体に害を与える成分…というわけではありません。

コレステロールというと身体に悪いというイメージがありますが、細胞を形づくったり、食べ物の吸収を助ける消化液の原材料になるなど、私たちが生きていくには必要不可欠な成分です。

悪玉コレステロールは、コレステロールを全身に届ける運び屋のような役割があり、一方で善玉コレステロールは余ったコレステロールを回収する役割があります。

悪玉と善玉コレステロール

身体を健康な状態に保つには、悪玉コレステロールと善玉コレステロールがうまく協力することが重要なのですが、トランス脂肪酸を摂りすぎると両者のバランスが崩れてしまいます。こうなると、血液の巡りが悪くなり、心臓の病気になりやすくなります。

悪玉が増えたら

なお、この効果はシス型では見られずトランス型だけに見られる特徴のため、トランス脂肪酸は身体に悪いと言われるようになったのです。ただし、なぜトランス脂肪酸のみがこのような悪影響を持つのかについては、まだ科学的な結論は出ていません。

3. 健康な食生活のために気をつけること

では、トランス脂肪酸による健康リスクを抑えるにはどうしたらいいのでしょうか?

結論としては、一般的な食生活を送っていれば、それほど気にする必要はありません。

その理由は、世界保健機関(WHO)が、人々の健康を守るためトランス脂肪酸の摂取量を総カロリーの1%以下にするよう推奨しているのに対し、日本人の摂取量は総カロリーの0.3%と、この基準を大きく下回っているためです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html

さらに消費者の皆様にご安心いただきたいのは、食品業界全体でトランス脂肪酸の低減を進めていることです。

1.3.で述べたように、私たち食用加工油脂メーカーは業界全体でトランス脂肪酸を減らすための製造方法や工夫を進めています。

したがって、日常的にバランスの取れた食事を心がけていれば十分です。

合わせて、食生活についてわかりやすくまとめた記事知らないと損する!? トランス脂肪酸の真実と、安心して食事を楽しむコツ」も御覧ください。

4.さいごに

さて、本記事ではトランス脂肪酸について、分かりやすさを意識して解説してみました。

「トランス脂肪酸ってよく分からないけど、なんとなく不安だった・・・」といった方も、正しい知識で毎日の食事を安心して楽しんでいただければ幸いです。