
バターがふんだんに使われ、濃厚な乳風味を特長とする「バタークリーム」。
バターは高価だから、似ているマーガリンで代用できないかと考えたことがある人も多いのではないでしょうか。
この記事では、バタークリームの開発に携わっていた筆者が「マーガリンでバタークリームは作れるのか?」について、メリット・デメリットの両面から分かりやすく解説しております。
記事を読み終える頃には、マーガリンを活かしたバタークリームが作れるようになっているはずです。
なお、伝統的なバタークリームにつきましては、以下の記事で詳しく説明しています。
☆『バタークリームとは?味の特長から作り方までを分かりやすく解説』
目次
1.マーガリンでも問題なくバタークリームは作れるのか?
バターとマーガリン。
とても似ている両者ですが、マーガリンでバタークリームが作れるのか?
その疑問について本章でお答えいたします。
1.1.マーガリンでも問題なくバタークリームは作れる
マーガリンでも問題なくバタークリームを作ることは可能です。
皆さんご存じの通り、マーガリンは、風味、見た目、物性などがバターにとても似ています。
そのため、マーガリンでもバターで作ったバタークリームに近いものを作ることができます。
ただし、バターを使っていないので商品として『バタークリーム』と表記していない事例も見られますが、
本記事では、便宜上、マーガリンで作ったクリームも『バタークリーム』としておりますのでご注意ください。
なお、本記事でのマーガリンは、『製菓用のマーガリン』を指しています。
パンに塗る用のマーガリンは、冷蔵庫から出してすぐ使えるように柔らかい物性で、バタークリームに使うには柔らかいので注意が必要です。
1.2.使い方はバターと同じ
使い方は、基本的にバターと同じになります。
冷蔵庫から出したてはバターほどではないですが少し硬いので、バター同様に柔らかくなるまで調温します。
バター | マーガリン | |
風味 | バター特有の濃厚な乳風味 | 乳風味 |
冷蔵庫から出したての硬さ | 硬い | 少し硬い |
価格 | 高価 | 安価 |
素材との混ざりやすさ | 分離しやすい | しっかり混ざる |
使用した場合の表示 | バター | マーガリン |
種類 | 限られる | 豊富 |
1.3.実際にマーガリンでバタークリームを作ってみた
ここでは、実際にマーガリンを使って作ったバタークリームについて、写真を交えて解説していきます。
今回は、リテールベーカリーなどで販売されているミルクフランスにサンドされているクリームを想定したシンプルなレシピで作っていきます。
【レシピ】
- ルミナスグランデ※ ・・・60%
- 加糖練乳 ・・・40%
※当社(月島食品)製品で、自然なバター風味を特徴とするマーガリンです。
【作り方】
- あらかじめマーガリンを常温(20~25℃)に出して、柔らかくしておきます。
- マーガリンをボウルに入れ、ミキサーで混ぜながらほぐします。
- 加糖練乳を何度かに分けて投入し、混ぜます。
攪拌途中、ゴムベラなどでクリームをボウルの底からかき混ぜることで均一に仕上がります。 - 目的の比重*¹まで混ぜます。(今回の比重は0.8)
- 最後にゴムベラで軽く混ぜて完成です。
*1 1mLあたりの重さ(g)を「比重」と言います。
100mLあたり100gなら比重は1.0、100mLあたり80gなら比重は0.8となります。
次の写真が、『バターで作ったバタークリーム』と『マーガリンで作ったバタークリーム』の比較になります。
色味に違いがあるものの、最終的な仕上がりに両者で大きな差がないことが分かります。
色味をバターにより近づけたマーガリンも存在しますので、仕上がりの見た目をよりバターに近づけることも可能です。
2.マーガリンだからこその良さ
1章では、バタークリーム作りでマーガリンがバターの代わりになることを説明してきました。
この章では、マーガリンでバタークリームを作るからこその良さについて触れていきたいと思います。
マーガリンを使う代表的なメリットは、次の3つになります。
- バタークリームを安く作れる
- クリームの分離が起こりにくい
- 用途に合わせた様々な種類がある
2.1.バタークリームを安く作れる
1つ目のメリットが、『安く作れる』です。
2025年1月時点での市販のバター(無塩)とマーガリン(無塩)の価格を調査しました。
結果、重量あたりの価格を比較すると、マーガリンはバターの約半額でした。
バタークリームのベースとなる油脂の部分を安く抑えることができますので、結果的に仕上がるバタークリームのコストも抑えることができます。
2.2.クリームの分離が起こりにくい
2つ目のメリットが、『分離が起こりにくい』です。
バタークリームは、油脂にシロップなどの水を多く含む材料を混ぜて作られますが、油脂と水は本来交じり合わないものですので、シロップなどの割合が増えていくと分離しやすくなります。
一方で、マーガリンは『様々な油脂の組合せ』や『乳化剤』などの活用によりバターにはない機能を有しています。
この機能の一つが『抱蜜性(シロップなどを抱えこむ力)』であり、クリームの分離を抑えることができます。
上の写真は、バターとマーガリンを同じレシピで、同じ時間ミキシングした時のそれぞれの写真になります。
バターを使用したものは、シロップがしっかり混ざらず、表面に滲み出てきているのが分かります。
一方で、マーガリンを使用したものは、しっかり混ざっているのが分かります。
2.3.用途に合わせた様々な種類がある
3つ目のメリットが、『用途に合わせた様々な種類がある』です。
バターは、原料が『牛の生乳のみ』とシンプルであるため、風味や物性については商品で大きな差はないと言えます。
そのため、バタークリームのバラエティもバターに合わせる素材(乳製品、練乳、卵、ピューレなど)に依存します。
一方で、マーガリンはバターより原料の種類が多く、何より油脂の硬さや融点などを目的に合わせて調整することが可能です。
マーガリンの種類の例は以下の通りです。
- バターの風味に近づけたマーガリン
- バターを配合したマーガリン
- 素材をたくさん混ぜても分離しないマーガリン
- 合わせる素材の味が引き立つように敢えて風味を弱くしたマーガリン
- 合わせる素材の色が引き立つように色が白いマーガリン
- 夏場の暑い時期でも溶けづらいマーガリン
- 冷蔵温度帯で食べても口どけの良いマーガリン
- 冷蔵庫から出してすぐに使える柔らかいマーガリン
業務用食用加工油脂メーカーである当社では『用途に合わせた様々な油脂』を取り扱っております。
この他にも、お客様の用途に合わせたマーガリンやバタークリームのレシピをご紹介いたします。
3.マーガリンを使うときの注意点
これまでの章で、マーガリンの良さについて説明してきましたが、もちろん気を付けるべき点もあります。
3章ではマーガリンでバタークリーム作りをする上で、注意すべき次の3つの代表例について説明していきます。
- 市販されているマーガリンは塩が入っていることが多い
- バターと全く同じ風味にするのは難しい
- 『バター』と謳うことができない
3.1.パンに塗る用のマーガリンでは塩味が強くなってしまう可能性がある
スーパーなどで売られているマーガリンは、パンに塗って食べることが想定されているものが主です。
それらは、塩が1.0%程度入っています。
そのため、出来上がるバタークリームも塩味が強いものとなり、バタークリームに不向きと言えます。
バタークリーム用としてマーガリンを買う場合は、『食塩0.3%程度までのもの』を推奨します。
また、『1.1.マーガリンでも問題なくバタークリームは作れる』でも触れましたが、パンに塗る用のマーガリンは、バタークリームを作るには柔らかいので、その点でも不向きと言えます。
製菓用のマーガリンは、スーパーに置いていないことも多いので、その場合はネット通販で『マーガリン 無塩』と検索すればヒットします。
また、業務用であれば無塩のマーガリンの種類も豊富ですので、お店などで使用量が多い場合は業務用をおすすめします。
当社も『用途に合わせた様々なマーガリン』を取り扱っておりますので、お問合せいただければ用途に合わせたマーガリンをご紹介いたします。
3.2.バターと全く同じ風味にするのは難しい
二つ目の注意点は、『バターと全く同じ風味にするのは難しい』です。
マーガリンは、バターの風味に近づけるためにバター以外の乳製品や香料などが配合されています。
各メーカー、工夫を凝らしてバターの風味近づけており、一見するとバターと見分けがつかないものもあります。
しかし、どうしてもバターにしか出せない風味もありますので、厳密に食べ比べをすると違いに気づく人もいます。
そういった点で、『限りなくバターに近づくが、全く同じとまではいかない』が現状です。
3.3.『バター』と謳うことができない
三つ目の注意点が、『バターと謳うことができない』です。
当然のことながら、原料がマーガリンになりますので、『バター』を謳うことができません。
『北海道産バター使用』などと謳いたい場合は、北海道産のバターを使用する必要があります。
4.最後に
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
マーガリンでも問題なくバタークリームを作ることができることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
また、マーガリンだからこその良さもありますので、その良さを活かせばバタークリーム作りの幅がより広がると思います。
弊社も様々なマーガリンを取り揃えていますので、お問合せていただければ用途に合った製品をご紹介させていただきます。
この記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。