バタークリームと生クリームが使いこなせる|両者の違いを徹底解説

お菓子によく使われるバタークリーム生クリーム
共にクリームであり、見た目も似ている両者ですが、中身を見ていくと、それぞれ違った『個性が見られます。
美味しいお菓子を作るのには、この『個性』をしっかりと理解する必要があります。
ここまで読んで少し身構えてしまったあなた!心配ありません。
この記事では、バタークリームの開発に携わってきた筆者が、その個性を分かりやすく解説していきます。
記事を読み終える頃には、きっとそれぞれのクリームの個性を理解し、お菓子作りに活かせるようになっているはずです。

1.バタークリームと生クリームは何が違う?

バタークリームと生クリーム。
どちらも『お菓子に使われる』という共通点がありますが、材料、作り方、風味など違う点もいくつかあります。
なお、本記事では、材料や作り方が定まっている伝統的なバタークリームを『バタークリーム』としております。
この章では代表的な6つの違う点について、一つずつ紐解いていきます。

  • 材料の違い
  • 風味の違い
  • 作り方の違い
  • 保型性の違い
  • 日持ちの違い
  • 乳化状態の違い

1.1.材料の違い

バタークリームも生クリームも、主な材料の大元は『生乳』です。

  • バタークリーム:生乳をもとに作られたバターが使われる
  • 生クリーム(以下、ホイップした生クリーム):生乳をもとに作られた生クリームが使われる

根幹の部分が同じ両者ですが、合わせる材料が異なってきます。

1.1.1.バタークリームはバターと糖類と卵から作られる

バタークリームは、以下のような材料で作られます。

  • バター
  • 糖類(砂糖やシロップ)
  • 卵(卵白だけ、卵黄だけ)
  • 水、牛乳

バタークリームの材料

このようにプレーンなバタークリームは、シンプルな材料で作られています。

使われる材料は、バタークリームの種類によって異なります。
伝統的なバタークリームは、大きく分けて下記の3タイプが存在します。

  • イタリアン・メレンゲ
  • パータ・ボンブ
  • クレーム・アングレーズ

それぞれ使われる材料は、以下の通りです。

バタークリームの種類
材料
イタリアン・メレンゲ バター、卵白、グラニュー糖、水
パータ・ボンブ バター、卵黄、グラニュー糖、水
クレーム・アングレーズ バター、卵黄、グラニュー糖、牛乳

 

三種のバタークリーム(イタリアン・メレンゲ、パータ・ボンブ、クレーム・アングレーズ)

左から、イタリアン・メレンゲ、パータ・ボンブ、クレーム・アングレーズ

また、最終的なお菓子の味や形態によって、さらに以下のような副素材が加えられます。

  • フルーツジャム
  • 果汁
  • ラムレーズン
  • チョコレート  …など

バタークリームが使われているお菓子の代表例としては、『クッキーサンド』などが挙げられます。
クッキーサンド

1.1.2.ホイップした生クリームは生クリームと砂糖から作られる

ホイップした生クリームは、以下の原料から作られます。

  • 生クリーム(乳脂肪分35~47%)
  • 砂糖

ホイップクリームの材料

バタークリームよりさらにシンプルな材料になります。

ホイップクリーム

バタークリームと同様に、副素材(洋酒、ココアパウダー、果汁など)を加えてアレンジすることもあります。

生クリームが使われているお菓子の代表例としては、『ショートケーキ』が挙げられます。ショートケーキ

1.2.風味の違い

バタークリームとホイップした生クリーム、それぞれ材料が異なっていますので、もちろん風味も違ってきます。

1.2.1.コクのある風味のバタークリーム

バタークリームの風味の特徴は、なんと言っても『コク』です。
バタークリームの主な材料であるバターが、厚みのある乳風味を形づくっています。
加えて、も使われるため、そこに卵のコクも加わります。

3つのタイプの中では、卵黄が使われているパータ・ボンブクレーム・アングレーズは濃厚で、卵白が使われるイタリアン・メレンゲが3つの中では比較的すっきりしています。

バタークリームは、コクのある材料がふんだんに使われるため、満足感の高い濃厚な風味に仕上がります。

1.2.2.フレッシュでみずみずしい味わいのホイップした生クリーム

ホイップした生クリームの風味の特徴は、『フレッシュでみずみずしい味わい』です。
『1.6.乳化状態の違い』で詳しく説明しますが、ホイップした生クリームは、水の中に油脂が分散したクリームになります。
そのため、口に入れた瞬間にクリームが溶け出し、みずみずしさが感じられます。

また、生クリーム以外には砂糖しか入っていないので、フレッシュな乳の味をしっかり感じられます。

1.3.作り方の違い

前章で原料の違いを見てきましたが、もちろん作り方も両者で違いがあります。
『ホイップする』という点では同じですが、工程が異なります。
この章では作り方の細かな違いを見ていきます。

1.3.1.バタークリームはホイップしたバターに素材を入れていく

バタークリームの作り方の一例は、以下のイラストの通りとなります。
バタークリームの種類や副素材の違いによって、それぞれのお店のカラーを出しています。

バタークリームの作り方

工程は比較的少ないですが、温度の管理や混合のタイミングなど、気を付けるポイントがあります。

1.3.2.ホイップした生クリームは生クリームをホイップするだけ

ホイップした生クリームは、バタークリームよりさらにシンプルな作り方になります。

ホイップクリームの作り方

材料、作り方がとてもシンプルですが、ホイップするとあっという間に硬くなるので、少し目を離した隙に硬くなりすぎることもしばしば。
目的の硬さに仕上げるには、少し経験が必要となります。

1.4.保型性の違い

見た目はとても似ていますが、両者で硬さは違います。
そのため、結果的に保型性(形がどれだけ安定しているか)にも違いがあります。
クリームの硬さは、クリームの保管温度における固体の硬さや量によって決まります。
各クリームの保管温度で、固体の状態であるのが『油脂』です。
油脂がクリームを形作る骨格になりますので、油脂が増えれば増えるほど固体が増え、しっかりとしたクリームになります。
各クリームの構造については、『1.6.乳化状態の違い』でイメージ図を用いて、もう少し細かく触れていきます。

1.4.1.常温でも硬さがあるバタークリーム

バタークリームは油脂が多く、骨格がしっかりしているので、ホイップした生クリームと比べて硬さがあります。
そのため、常温でもクリームがダレづらく、絞ったクリームの形が保たれます。

一方で、冷蔵では硬くなりすぎることがあるので、食べるときには少し常温に戻すとより食べやすくなります。

*1【ダレ】
温度が高くなると、骨格となる油脂が柔らかくなり、結果的にクリームも柔らかくなった状態のことです。

1.4.2.冷蔵でもふんわりとやわらかいホイップした生クリーム

ホイップした生クリームはバタークリームに比べて油脂が少なく、また油脂が水分中に存在するため、冷蔵でもふんわりとしたやわらかな食感となります。

しかし、常温ではクリームがダレてしまい、形も崩れてしまいます。
そのため、冷蔵帯での使用が基本となります。

1.5.日持ちの違い

ここまでで、風味や硬さなどの違いに触れてきましたが、日持ちにも違いがあります。
使う材料によって日持ちの度合は変わってきますが、一般的な日持ちについてこれから説明していきます。

1.5.1.室温で1週間くらい持つバタークリーム

バタークリームは室温で保管できるものもあり、日持ちも1週間くらい持つものもあります。
これは、水分活性*²が低いことや卵白に含まれるリゾチームという酵素に殺菌作用があるため¹⁾です。

1.5.2.冷蔵で1、2日しか持たないホイップした生クリーム

ホイップした生クリームは基本的に冷蔵保管となり、日持ちも1、2日しか持ちません。
これは、水分活性が高いためです。

微生物が生育するには水分が必須となります。
そのため、微生物が利用できる水が多いホイップした生クリームは、バタークリームより微生物が増えやすい環境と言えます。

*2【水分活性】
食品中の水分に占める自由水の割合を水分活性(Water Activity)といい、食品の保存性の高さを測る指標の一つとされています。
食品に含まれる水には大きく分けて、自由水と結合水があります。
結合水は食品中の成分と結びついており、身動きが取れない水であるのに対して、自由水は食品中を自由に動き回れます。
自由水は微生物が利用することができるので腐敗の原因となります。
水分活性の値が高いほど、腐敗しやすくなります。¹⁾

【参考文献】
1)河田昌子.新版お菓子「こつ」の科学.柴田書店,2013

 

1.6.乳化状態の違い

バタークリームとホイップした生クリームの違う点の最後は、『乳化』です。
乳化とは、水と油脂といった本来混ざり合わないもの同士が、分散し均一の状態になっていることを指します。
この乳化の状態が、両者で全く異なってきます。

1.6.1.油脂の中に水が点在しているバタークリーム

バタークリームは油脂の中に水が分散している乳化状態をとっています。
これは、材料となるバターが同様の乳化状態であるため、結果的にバタークリームも同じになります。
イメージ図が以下の通りになります。

バタークリームの構造イメージ図
図の通り、バタークリームは全体が油脂で覆われています
バタークリームを形作る骨格は油脂なので、油脂の多いバタークリームはしっかりとした保型性を持つことになります。

1.6.2.水の中に油脂が分散している生クリーム

生クリームは水の中に油脂が分散している乳化状態をとっています。
ホイップした生クリームのイメージ図が以下の通りになります。

ホイップクリームの構造イメージ図

図の通り、生クリームは全体が水で覆われています。
ホイップ前の生クリームは油脂が均一に分散していますが、攪拌されることで油脂同士のネットワークが作られて硬さがつきます

2.バタークリームと生クリームの使い分け

これまでの章でバタークリームと生クリームのそれぞれの違いを見てきましたが、両者の個性は理解できましたか?
この章では、個性を活かしたそれぞれに合った使い方を紹介していきます。

2.1.バタークリームはサンド用クリームに向いている

バタークリームの特長の一つである『保型性』を活かせるのが、クッキーサンド用のクリームです。
高い保型性を有しているので、常温でもクリームがダレづらく、沢山クリームをサンドしても潰れにくいのが特長です。
そのため、見た目にもインパクトのあるお菓子を作ることができます。
バタークリームのクッキーサンド

また、絞ったクリームも崩れづらいので、ケーキのデコレーションなどにも向いています。
バタークリームのデコレーションケーキ

2.2. ホイップした生クリームはチルドの洋生菓子に向いている

ホイップした生クリームの良さが最も活かせるのが、チルドの洋生菓子です。
『ケーキ=生クリーム』というイメージが定着しているくらい、世間一般で認識されている生クリームのスタンダードな使い方ではないでしょうか?

よく使われる理由としては、次のものが挙げられます。

  • バタークリームとは違い、冷蔵でもふんわりとやわらかい
  • みずみずしく後味もすっきりとしているので、クリームをふんだんに使ったものに向いている

ホイップクリームのデコレーションケーキ

3.最後に

この記事を読む前は、バタークリームとホイップした生クリームの違いが分からなかった皆さんも、今ではそれぞれの個性を理解できたのではないでしょうか。
バタークリームとホイップした生クリームにはそれぞれ適材適所があります。

  • コクがあり保型性の良いバタークリーム
  • みずみずしい味わいでふんわり食感のホイップした生クリーム

これらの個性をしっかり活かすことで、食べた人が笑顔になれる美味しいお菓子に仕上がることは間違いありません。

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