
油の「酸価」と「過酸化物価」。
「一体何のことだろう?何やら難しそうだな」と敬遠される方も多いかもしれません。
これらは、いわば「油の健康診断」の指標です。
人が健康診断で健康状態を可視化・管理するのと同様に、油も分析・検査により品質状態を評価します。
たとえば、人の健康診断では、コレステロールや血圧を測ることで、異常の有無や原因箇所を特定します。
油は酸価や過酸化物価を測定することで、その油がどの程度劣化しているのかを知ることができます。
本記事では「酸価と過酸化物価とは何なのか」を分かりやすく解説します。
食品開発に携わる方にとって、品質管理の実務にすぐ役立てていただける内容です。
ぜひ最後までお読みください。
目次
1.酸価(AV)・過酸化物価(POV)とは?
酸価・過酸化物価とは「品質を低下させる要因となる物質」を測定した数値であり、油の劣化状態の指標となるものです。
ここでは、酸価・過酸化物価は「油脂のどのような劣化を示すか」を解説します。
1.1.酸価(AV)は「遊離脂肪酸」の指標
酸価は「Acid Value:AV」と表現され「遊離脂肪酸」がどれほど含まれているかを示し、油脂の品質の良否を判断するうえで重要な指標です。
遊離脂肪酸について、以下に解説します。
- トリアシルグリセロール(油の主成分)から分離した脂肪酸
- 人体に対する悪影響の懸念は低いとされているが、油の風味を損なわせる
- 種類によっては異臭として感じられ、食べると舌を刺激するような味がする

脂肪酸は名前の通り「酸」なので、アルカリで中和できます。
酸価(AV)は、油脂1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数を表します。
遊離脂肪酸が多いほど中和する水酸化カリウムが必要になるため、酸価(AV)が高くなります。
1.2.過酸化物価(POV)は「ヒドロペルオキシド」の指標
過酸化物価は「POV」とも言われ、「ヒドロペルオキシド」という化合物がどれほど含まれているかを示し、油脂の酸化の程度(油脂が酸素とどの程度化学反応したか)を知るための重要な指標として使われます。
ヒドロペルオキシドについて、以下に解説します。
- トリアシルグリセロール(油の主成分)が酸化する(酸素と化学反応を起こす)と生成する
- 油脂の風味を損なわせる成分の原因となる
- 大量に食べると体へ悪影響(胃もたれ、多量に食べると吐き気や腹痛)となる可能性がある

過酸化物価(POV)は、油脂1kgとヨウ化カリウム(KI)を反応させ、遊離したよう素の量をミリ当量数(mEq)で表したもので、試料1kg 当たりのヒドロペルオキシド(酸素が結合した油脂)が入っている量を指します。
ヒドロペルオキシドが多いほど遊離するよう素(I₂)も増えるため、過酸化物価(POV)は高くなります。
参考 あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター平成26年6月16日発行_過酸化物価・酸価の測定法、日本油化学会_油脂・脂質の基礎と応用
2.酸価(AV)・過酸化物価(POV)で見る油脂の劣化レベル
油脂を使用した加工食品は、酸価(AV)・過酸化物価(POV)の変化を検査することで、品質の劣化レベルを客観的に判定でき、あわせて異常を把握できます。
以下は、即席めんと菓子に含まれる油脂の酸価と過酸化物価における衛生上の運用基準です。
- 即席めん類
めんに含まれる油脂の酸価が三を超え、又は過酸化物価が三〇を超えるものであってはならない - 菓子
(a)その製品中に含まれる油脂の酸価が三を超え、かつ、過酸化物価が三○を超えるものであってはならない。
(b)菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が五を超え、又は過酸化物価が五○を超えるものであってはならない。

✔即席めん
即席めんは、酸化・劣化のリスクが高く、食品衛生法にもとづく「食品の規格基準」に酸価(AV)・過酸化物価(POV)が定められています。
法令上の規格であるため、適合しない製品の流通は原則不可となっています。
✔菓子
菓子は、酸価(AV)・過酸化物価(POV)の衛生上の指導基準として、厚生労働省から通達(環食第二四八号)が出されました。
菓子は範囲が広く、製品が非常に多様であるため、同列の規格を定めることは困難であり、品質判断目安として使われます。
参考 厚生労働省_即席めんの規格基準、昭和五二年一一月一六日_環食第二四八号
3.劣化レベルが高い油脂を摂取しないために
加工食品に含まれる劣化した油=酸価(AV)・過酸化物価(POV)が高い油を摂取しないためには、劣化を促進させる要因への対策を講じることが重要です。
この章では、酸価(AV)・過酸化物価(POV)が高くなる要因と対策を解説します。
3.1.酸価(AV)が高くなる要因と対策
遊離脂肪酸は原料由来のものもありますが、それは精製工程でほとんど取り除かれます。
精製後は、加水分解(トリアシルグリセロールと水分が反応)したときに遊離脂肪酸が生成し、酸価(AV)が高くなります。
特に、揚げ料理では高温下にあるため、加水分解が進み遊離脂肪酸が著しく増加します。
揚げ種となる食材から出た水分とトリアシルグリセロールが反応し、遊離脂肪酸が生じます。
揚げ油として使用するたびに遊離脂肪酸が増えますが、揚げ種からの水分流出を抑えることは困難です。
揚げ油には毎回新しいものを使う、または、早めに交換することが重要です。
3.2.過酸化物価(POV)が高くなる要因と対策
新鮮な油脂にヒドロペルオキシドはほぼ含まれていませんが、酸素に触れる環境を避けることは困難なため、ヒドロペルオキシドは自然と生成し、過酸化物価(POV)が高くなっていきます。
過酸化物価(POV)の上昇を抑制するのは、できるだけ酸素に触れさせないことが最も効果的です。
また、熱・光・金属は酸化の促進要因となります。
過酸化物価(POV)を抑えるために、以下の工夫が有効です。
- 密閉・遮光できる容器を使用し、直射日光を避けた涼所に保管。
- 開封後はできるだけ早く使い切る、又は、期限前のものを使用する

別記事「なぜ油は酸化するのか?|原因と対策をやさしく解説」では、酸化について詳しい対策を解説しています。
油脂の酸化にお困りの方は、是非ご一読ください。
参考 あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター平成30年3月16日発行_油脂の劣化
4.酸価(AV)の上昇を抑えた油「フライディーン」
揚げ油は長時間使用すると、劣化による発煙、劣化臭が生じるため頻繁に交換する必要があります。
しかし、交換頻度が高いとコストや手間がかかり、長く使える揚げ油があったらいいのに、と思う方もおられるのではないでしょうか?
弊社の「フライディーン」という油は、ドーナツなどの揚げ油として使用したとき、劣化臭と発煙が遅く、劣化しにくい油です。
下のグラフは、ケーキドーナツの揚げ油に長時間使用したときの、酸価(AV)の変化を測定した結果です。
この結果より、フライディーンの方が従来品より油の酸価(AV)の上昇がゆるやかで、劣化が抑制されていることが確認できます。
フライディーンを揚げ油に使用すると、1ヵ月間の揚げ油の使用量が12.5%カットされ、油の交換期間の延長とコストダウンが期待できます。
さらに、フライディーンを使用したフライ品は油のベタツキが少なく、あっさりした風味に仕上がります。
「油の交換頻度を減らしたいが、品質も落としたくない」とお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。
さいごに
酸価(AV)・過酸化物価(POV)、いかがでしたでしょうか?
知ってみれば、それほど難しくないと感じられた方も多いかもしれません。
酸価(AV)・過酸化物価(POV)は、油脂の安定した品質を維持し、食の安全を守るために重要な指標です。
当社は酸価(AV)・過酸化物価(POV)を含む、厳格な品質管理と衛生基準で運用しております。
今後もこの体制を維持し、お客様にとって安心安全な製品をお届けしてまいります。
