
カップラーメン、ポテトチップス、マーガリン、ハンドソープ、など身近なものをよく見ると、見慣れないマークがあることに気づきます。
南国にある植物の葉のようなイラストに「RSPO」のロゴ。
これって一体なんのマーク?このマークがあると、何の意味があるの?など、様々な疑問が浮かび上がるのではないでしょうか?
実はこのマーク「地球の環境や社会問題に対して取り組んでいる」という証なのです。
「RSPO」について知りたいという方、環境や社会問題に関心がある方は、是非ご一読ください。
目次
1.「RSPO」とは?
「RSPO」とは、「Roundtable on Sustainable Palm Oil」の単語の頭文字を取ったものです。
日本語に直訳すると、「持続可能なパーム油のための円卓会議」になり、本来の意味としては「パーム油産業が機能し続けられるように、参加者たちが対等な立場で課題に対して解決に当たっている」ということになります。
- Roundtable:円卓会議
「会議の参加者たちが、対等な立場で話し合い、課題に対して取り組む」ということです。
「円形の机で行う会議」は、身分による席順を定めずに話し合うことを意味しています。
中世イギリスのアーサー王が「上座下座のない円卓を用いた」という伝説から来ている言葉です。 - Sustainable:持続可能
「何かをし続けられる」という意味です。
最近SDGsが広まってきていることで、よく耳にするワードですよね。 - Palm Oil:パーム油
「アブラヤシ」という植物の実からとれる油脂です。
世界油脂生産量でトップに位置し、食品や洗剤など広い用途で使われています。
(パーム油について詳しく知りたい方は「パーム油ってどんな油脂?気になる疑問をまるごと解説!」の記事を参照ください。)参照_中谷技術士事務所資料「食用油脂の基礎と劣化防止」
参照_RSPO公式HP、WWF公式HP、内閣府「円卓会議の目的」
2.RSPOが設立された背景
RSPOは「持続可能なパーム油」が地球や人々の問題を解決するために、世界中で取り組むことを目的としています。
RSPO設立のきっかけは、EUが「マレーシアの広大なアブラヤシ農園開発が、自然に悪影響を及ぼしているのではないか」と問題提起したことです。
しかし、その背景には、世界中でパーム油の需要が高まっており、それに応じて急速にアブラヤシの農園開発が進められたことがあります。
無計画、無責任にパーム油が生産され続けると、次のような問題が起こるとされています。
- 農地拡大のため森林破壊が進み、環境汚染が進む
- 森林で生活する動物が住処を奪われ、絶滅危惧種が増える(すでに種絶滅した種もある)
- 農園や搾油工場で働く人々が、過酷な労働を強いられる(児童労働も懸念されている)
RSPOはパーム油産業の関係者全体で、「持続可能なパーム油」の世界基準を作り、普及することで問題解決に導こうとしています。
参照
RSPO公式HP_持続可能なパーム油で、グローバルなパートナーシップ、目に見える絶滅
WWF公式HP_RSPO認証について、インドネシアスマトラ島の熱帯林の減少、世界で起こる森林破壊の現状
日本植物油協会_SPO
農林水産省_RSPO資料
3.RSPOの参加者たち
RSPOは、世界中から「持続可能なパーム油」の協力者たちが繋がることができる場所となっています。
RSPOの参加者たちは、「パーム油産業を持続可能なものにする」という志を持ち、「パーム油産業における、7つの部門の非営利団体」で構成されています。
- パーム油の生産業
- 搾油・貿易業・加工業
- 消費者製品製造業
- 小売り業
- 銀行・投資会社
- 環境または自然保護の非政府組織
- 社会や開発系の非営利組織
これらの団体がRSPOに参加し、様々なテーマについて話し合いを行い、持続可能なパーム油を広める活動をしています。
参照
RSPO公式HP_会社概要、組織として、メンバーシップカテゴリ
農林水産省_RSPO資料
4.「持続可能なパーム油」ができること
パーム油は安定して世界中に供給する必要がありますが、ただ供給し続けられればよい、というわけではありません。
「地球の環境や人々の生活を脅かすことのない方法で供給し続ける」ことが重要であり、つまり、「持続可能なパーム油」ということになります。
地球や人々の問題解決に、「持続可能なパーム油」がどのように繋がっていくのでしょうか?これについて、解説します。
4.1.農園の急速な拡大を危惧し、基準を守り環境を維持する
持続可能なパーム油は、環境に配慮した基準が設けられています。
インドネシアとマレーシアでは、下記のような基準を設定しています。
マレーシア | インドネシア |
|
アブラヤシ農園の新規開発許可を認めない |
農園開発による森林破壊を防ぐことで、生態系を守り、二酸化炭素の排出や水質汚染を防げる可能性があります。
泥炭地は、有機物質と水で構成されており、炭素を多く含んでいます。
農園開発の際に、泥炭から水を抜くと、多くの二酸化炭素も排出されます。
また、乾燥すると火災の可能性が高くなり、森林の消失だけでなく、人々や動物にも危険が及びます。
パーム油生産国の環境保全に繋げるため、「持続可能なパーム油」の基準を普及することが重要となります。
参照
RSPO公式HP_目に見える絶滅、環境影響
WWF公式HP_RSPO認証について、マレーシア持続可能なパーム油(MSPO)
みずほ銀行資料_パーム油関連規制
環境省_よりよい未来のために泥炭地を乾燥から守る
4.2.他の植物油よりも、パーム油の方が合理的に生産できる
パーム油の生産効率の良さを生かせば、森林破壊を防ぐことができます。
それは、栽培面積が同じであった場合、パーム油は他の植物と比較して、最も多くの油を生産できるからです。
それでもなお、無責任に生産するのでは、せっかくの「生産効率の良さ」が意味を失くしてしまいます。
計画的に生産する、持続可能なパーム油であることが重要です。
参照
RSPO公式HP_事実の取得
WWF公式HP_RSPO認証について
日本植物油協会_植物油の視点・食料安全保障について
植物油脂協会_パーム油
ボルネオ保全トラストジャパン「パーム油白書2023」
4.3.パーム油生産国の人々の生活を豊かにする
パーム油の生産は、世界中の約700万人(うちインドネシア約400万人、マレーシア約100万人)の小規模農家の生計を支えています。
仕事を見つけるのが難しい遠隔地にある農村部の多くが、パーム農家として雇用されています。
RSPOは、人々が幸福な生活が持続できるような労働条件の確立を目指しています。
「持続可能なパーム油」という言葉には、パーム油農家の過酷な労働条件を解消するための取り組みも含まれています。
参照 RSPO公式HP_経済的および社会的影響
4.4.パーム油生産国の経済成長を図る
「持続可能なパーム油」は、生産国の経済を支えています。
パーム油は植物油で最も生産量が多く、世界に供給されているパーム油は、ほぼインドネシアとマレーシアの2か国が生産しています。
アブラヤシは熱帯地区で生産できる性質を持つため、インドネシアやマレーシアはアブラヤシの生育に向いており、年間を通して収穫できます。
大豆油を多く生産しているのは、中国とアメリカ、菜種油を多く生産しているのは、カナダ、ドイツ、中国、インド、となっています。
パーム油は、アメリカや中国など、国土が広い国が生産している植物油を追い越すほどの生産性を持っています。
また、インドネシアとマレーシアは、パーム油が輸出品目の中で大きな割合を占めます。
インドネシアやマレーシアにとってパーム油産業は大きな強みとなり、経済成長に繋がります。
参照
RSPO公式HP_経済的及び社会的影響
日本植物油協会_世界の植物油生産と貿易
外務省_国・地域
日本貿易振興機構(ジェトロ)_インドネシアの貿易投資年報、マレーシアの貿易投資年報、マレーシア、パーム油などの輸入規制で欧州に代表団派遣、持続可能性の取り組み訴える
5.企業にとっての「RSPO認証」の意義
RSPO認証とは「持続可能なパーム油に貢献していることを認められた」証です。
RSPO会員になるだけでは、RSPO認証を受けることはできません。
「RSPO認証を受ける」ことと、「RSPO会員でいる」ことは大きな違いがあり、企業にとって「RSPO認証を受ける」ことは大きな意味をもちます。
どのような意味を持つのか、ということを解説します。
参照
RSPO公式HP_RSPOメンバーであること、RSPOに参加する理由
5.1.地球や人々の問題解決に貢献している
RSPO認証を受けているということは、「持続可能なパーム油」に準ずる方法で企業活動を行っているということです。
「持続可能なパーム油」を利用することは、地球や人々の問題解決に貢献したことになります。
そうすると次のような良い影響が期待されます。
- 労働の権利の保護と生産性の向上
- 労働災害の削減
- 小規模農家の参加
- 温室効果ガス排出量の削減
- より良い廃棄物管理
- 規制要件への準拠の向上
- 市場の信頼
引用元_RSPO公式HP_証書
企業が、適切な方法や基準を守り続けることが、地球の問題解決への糸口です。
5.2.お客様からの信頼獲得に繋がる
地球の問題解に取り組んでいる企業は、とても好感が持てますよね。
それは、ユーザーや消費者にとって、該当企業への信頼にも繋がります。
「RSPO認証」を取得するには、まず「RSPO会員」になり、次に認証を受けるというステップを踏みます。
認証を受けるには、要求事項を満たすことが条件となります。
- RSPO規格を実施の保証・遵守・責任者を書面化したものを備える
- PSPO認証アブラヤシ製品の購買が遵守され、PSPO認証製品に関する最低限の情報が文書で入手できること
- 搾油工場などの取引を記録する
- RSPO認証量を出荷告知し、最低年に一度履歴調査を行う
- RSPO規格が実施・遵守されているか、内部監査を行い、記録すること
など、様々な要求事項があります。
要求事項を満たすことは易しいことではないのですが、要求事項を満たすことで、持続可能なパーム油の普及・発展に貢献していることになります。
参照
RSPO公式HP_メンバーシップカテゴリ、私たちの基準、認証の仕組み、当社の商標
WWF公式HP_RSPOマーク利用の申請方法について
RSPO規格_サプライチェーン向け生産・流通・加工過程の管理一般要求事項
5.3.消費者と「RSPO」の架け橋になる
RSPO認証の企業は、消費者とRSPOの架け橋となり、消費者が地球の問題解決に参加する手助けをできます。
「RSPO認証」された企業は、条件を満たした製品に「RSPOマーク」をつけられます。
消費者がRSPOマークの製品を選択すると、「RSPO」を支援することなり、「地球の問題への解決策」に貢献したことにもなります。
それは、消費者が身近にできる「地球問題への解決策」です。
環境問題や社会問題に貢献したいが、すぐには動けない、という方はこういったことからも始められます。
RSPO製品はJaspon RSPO製品一覧にて確認することができます。
参照 RSPO公式HP_個人として
6.月島食品グループの取り組み
RSPO認証を受けた日本の企業には、多くの油脂企業が名を連ねており、弊社と弊社のグループ会社もその中の一員です。
弊社は、2014年にRSPO会員となり、油脂加工企業では早い方でした。
翌年に神戸工場、神戸物流センターで認証獲得しました。
その後は、各工場、グループ会社など次々と認証を拡大し、認証製品の生産を開始しています。
RSPO認証は、P&C認証とサプライチェーン(SC)認証があります。
また、サプライチェーンには、IP、SG、MB、B&Cの4つのモデルがあります。
弊社が獲得しているのは、サプライチェーン(SC)認証にて、SGとMBです。
サプライチェーンモデル名称 | 略名 | 型 | 概要 |
アイデンティティ・プリザーブド | IP | 同一性保持 | 単独の認証農園から最終製品製造者まで、完全に別のパーム油と隔離され受け渡される。生産元の農園を特定できる。 |
セグリゲーション | SG | 分離 | 複数の認証農園から最終製品製造者まで、非認証パーム油と混ざることなく受け渡される。 |
マスバランス | MB | 物量収支 | 認証農園と非認証農園のパーム油が製造過程で混ざり合う。最終製品に非認証油も含まれるが、購入した認証油の数量は保証されている。 |
ブック・アンド・クレーム | B&C | 帳簿ベース主張 | 物理的な認証油の取り扱いはなく、認証油のクレジットが生産者と最終製品製造者や小売業との間でオンライン取引されている。 |
参照
WWF公式HP
農林水産省_パーム油認証システムの概要
RSPO認証規格_範囲
7.まとめ
「RSPO」は、地球や人々の問題解決につなげるためのもの、ということがおわかりいただけましたでしょうか?
パーム油は現在社会で大きな役割を果たしており、更なる生産力向上のため、品種改良も進んでいるという情報もありました。
「持続可能なパーム油」への取り組みが、パーム油を取り巻く環境・社会の問題解決へのカギとなります。
地球や人々の問題解決のため、弊社はグループ全体でRSPO会員として、「持続可能なパーム油」に取り組んで参ります。