硬化油とは?食品における硬化油の現状を油脂メーカーの研究員が解説

液体油と固体脂

「硬化油」と聞いた時、皆さんはどんなイメージを持ちますか?
「『硬化』と『油』だから、固形の脂なんだろうな」
「ネットで調べると健康に悪いと出てくる」
「高校の化学の時間で聞いたことがあるけど、マーガリンに使われているらしい」
とは言え、今一つなじみがない言葉ではないでしょうか?
そんな硬化油について、油脂を取り扱って75年以上の食用加工油脂メーカーの研究員が、食品における硬化油の現状について解説します。

1.硬化油とは、やわらかい油を硬くなるように加工した油脂

硬化油とは、常温で液体の油などに水素を結合させて、常温で固型の脂にするなど、油脂の硬さを変化させた油脂です。
多くの油脂には、水素が結合できる箇所がいくつかあります。
下の図は、油脂がどのような構造をしているかを模式図化したものです。
この場合だと、折れ曲がっている部分に水素を結合させることができます。
この
折れ曲がっている部分のうち、どれくらいの割合で水素を結合させるかによって、硬さを調整することができます。

油脂の模式図と水素が結合したときのイメージ図

このような油脂の加工方法の事を「硬化」と言います。
硬化の中でも、水素が結合できる箇所の一部分に水素を結合させることを「部分硬化」、全ての箇所に水素を結合させることを「極度硬化」と言います。
上記の加工方法の名前を取り、硬化により加工された油脂全般を「硬化油」と言い、特に極度硬化された油脂の事を「極度硬化油」と言います。

硬化による状態変化

なお、硬化の別名として「水素添加」という言葉があります。
そのため、硬化油の事を「水素添加油」と表現することもあり、少しだけ硬化した油脂の事を上記の写真では「微水添油」と表現しています。
上記写真のナタネ硬化油と書いてあるものも部分硬化した油脂です。
左から「ナタネ油 → 微水添ナタネ油 → ナタネ硬化油 → ナタネ極度硬化油」の順に硬くなっていくのが写真からもわかります。

使用する油脂は、ナタネ油のような常温で液体の油だけでなく、ヤシ油やパーム油のような常温で固型の油脂を原料に硬化油を作ることもあります。

2.硬化油が食品に使われる事例は減っている

近年、硬化油が食品に使われる事例は、本章のタイトルにもある通り減っています。
この章では、硬化油が過去に使われていた理由と、なぜ使われなくなったかについて解説します。

2.1.硬化油は物性調整に便利だったため、使われていた

1章の写真にもあるように、ナタネ油を硬化油にすると液体から固体まで自由に硬さを調整することができます
そのため、マーガリンなどの油脂製品の硬さを調整する際、硬化油は非常に有効な原料で、高校の化学の教科書にも「硬化油の使用例として代表的なものはマーガリン」として記載されるくらい、かつては一般的なものでした。
また、マーガリンだけでなく、ホイップクリームやその他幅広い油脂加工品に利用されていました。

2.2.硬化油が食品に使われなくなった理由

現在では、マーガリンやホイップクリームなどの油脂製品に極度硬化油以外の硬化油が使われる事例は、かなり減少しています。

それは、硬化油にはトランス脂肪酸が副産物として含まれてくるためです。
トランス脂肪酸には、心臓疾患との相関性があるといわれており、そのため食品において硬化油を利用しないよう業界全体で努めた結果、食品への使用が減りました。
結果として、マーガリン中のトランス脂肪酸の量は劇的に減っています。
農林水産省「食品中の脂質とトランス脂肪酸濃度」のデータを一部抜粋し下記のグラフを作成

マーガリンのトランス脂肪酸の含有量の推移

※トランス脂肪酸についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事を合わせてご覧ください。

トランス脂肪酸とは?研究員がわかりやすく解説!>>>
知らないと損する!? トランス脂肪酸の真実と、安心して食事を楽しむコツ>>>

筆者としては、高校の教科書にある「硬化油の代表的使用例はマーガリン」との記載を早く書き換えてほしいと切に願います。

2.3.現在の硬化油の使用事例

<極度硬化油は食品に使われている>
硬化油のうち極度硬化油は、現在も食品の原料として使用されています。
極度硬化油にはトランス脂肪酸が含まれないことがその理由です。
極度硬化油にトランス脂肪酸が含まれない理由については、この後の3.1.で解説します。

<食品以外の硬化油の使用事例>
硬化油(植物・動物油を水素添加したもの)は、非食品分野でワックス様の固体脂として広く利用されています。
その目的は、可塑化・結晶性制御・増粘・艶出し・撥水・潤滑・皮膜形成などで、具体的用途には医薬品(坐薬、徐放基材)、化粧品(クリーム・バーム・スティック)、ホットメルト接着剤、キャンドル、印刷インキ、ゴム・プラスチック加工、金属加工油、繊維油剤、農薬キャリア(基材)などが挙げられます。

3.硬化油の特徴

この章では、「硬化油の特徴」として、「副反応により生成するもの」「物性への影響」「風味への影響」について解説します。

3.1.硬化油には、副反応でできたトランス脂肪酸が含まれる

1章でも記載した通り、硬化は油脂に含まれる脂肪酸に、水素を結合させる加工方法です。
この反応だけが起きれば、何も問題はありません。
ところが、油脂を硬化する際に問題となるのは、メイン反応とは別に副反応が起こることです。
この副反応が起こる際にトランス脂肪酸は生成されます
具体的には、硬化により「くの字」に折れ曲がった部分に水素が結合し、脂肪酸がまっすぐ(直鎖)になります
実際の反応は一方通行で進むわけでなく、メイン反応とは逆方向にもどる反応も起こっており、進む反応の方が戻る反応よりも優勢であるため、見かけ上一方通行のように硬化の反応が進んでいきます。

硬化のメイン反応と副反応

そしてメインの反応と同時に副反応も同時に起こり、これもメインの反応と同様、シス型とトランス型を行ったり来たりする反応が一定割合起こります
これが硬化の際、トランス脂肪酸が生成する要因となります。
さらに、極度硬化油にトランス脂肪酸が存在しないのは、水素が結合できる箇所のほぼ全てに水素が結合した結果、脂肪酸が直鎖状の構造になるためです。

大豆油を硬化した時にどれくらいトランス脂肪酸が発生するかを示した図

上の図は大豆油を硬化した時にどれくらいトランス脂肪酸が発生するかを示したものです。
硬化(水素添加)がほぼ完全に進行する(グラフの左側になる)とトランス脂肪酸がなくなっていることがわかります。
縦軸:トランス脂肪酸含量(%)
横軸:ヨウ素価

※ヨウ素価                                                                                              
油脂の模式図にある「折れ曲がっている部分の数(二重結合の数)」を数値化したもの。
数値が小さいほど、上の図の直鎖状の脂肪酸が多いことを示します。

3.2.硬化油には、独特の物性がある

硬化油には独特の結晶性があり、固まった時の油脂の硬さにも特徴が出ます。
この要因の一つとなるのが、硬化によって生成するトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、シス型の脂肪酸と飽和脂肪酸の間の融点で、炭素数(下の図の黄色い丸の数)が同じ18の脂肪酸同士で比較すると、以下のようになります。

・シス型(オレイン酸)・・・約13℃
・トランス型(エライジン酸)・・・約43℃
・飽和脂肪酸(ステアリン酸)・・・約70℃
農林水産省「トランス脂肪酸」参照

脂肪酸の構造

硬化油は、トランス型の脂肪酸をある程度含んだ組成となるため、元々の油脂では出せない物性となります。

2000年代初頭、マーガリンに硬化油を使用していた時代からトランス脂肪酸低減化へと時代が動いた時には、硬化油に似た物性を出すことに大変苦心しました。
私たち食用加工油脂メーカーは、油脂の加工方法(エステル交換など硬化以外の加工)やマーガリンの製法を駆使して対応しました。
※油脂の加工やマーガリンの製法についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事をあわせてご覧ください。

油脂の性質を変える!「エステル交換」をわかりやすく解説>>>
これを読めばマーガリンの作り方が分かる!6つの工程を完全ガイド>>>

3.3.硬化油には、独特の風味がある

硬化油には独特の甘い風味があるといわれています。
一昔前のフライドポテトなどのフライオイルには、硬化油が使用されていましたが、この独特の風味の一部は、硬化油に由来します。
この風味は、硬化を行う際に発生する微量成分が原因であると考えられています。

4.まとめ

本記事では「硬化油」について詳しく解説しました。

まとめますと、硬化油とは、やわらかい油を硬くなるように加工した油脂のことを指します。
しかし、最近では硬化油が食品に使われる事例は大幅に減少しており、特にマーガリンはもはや硬化油の利用の代表例とは言えなくなっています。
この背景には、副反応として生成されるトランス脂肪酸が大きな影響を与えています。
トランス脂肪酸は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、多くの消費者や規制機関がその使用を懸念するようになりました。

このため、わたしたち食用加工油脂メーカーは硬化油の代わりとなる新しい油脂や製法の開発に取り組み、硬化油の使用量を削減しています。
これにより、食品業界でもより健康的で安全な選択肢が提供される方向へと進んでいます。
硬化油に関する取り組みの変化は、時代のニーズを反映した重要な進展といえるでしょう。

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