
パンやスイーツの重要なパーツである「フラワーペースト」は、カスタード味やチョコレート味などでおなじみの、加熱殺菌されたペースト状の食品です。
口にしたり、使用する機会のある方も多いかと思いますが、一体どんな原材料からできているのか疑問に感じたことはありませんか?
フラワーペーストは多種かつ、一般的には目にする機会が少ないと思われる原材料が使用されており、どのような原材料が、どのような目的で使用されているのかわかりづらい食品です。
本記事ではフラワーペーストを日々開発する筆者が、フラワーぺーストがどんな原材料からできているのか。
またそれらの使用目的について、弊社の開発事例を交えながらわかりやすく解説します。
本記事ではフラワーペーストの原材料を
- 骨格となる原材料
- 幅広く使用される原材料
- その他の原材料
に分類して解説していきます。
本記事を読めば、謎多い食品フラワーペーストへの理解を深めることができるでしょう。
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目次
1.フラワーペーストの骨格となる原材料|小麦粉・でん粉
本章ではペースト状の物性に寄与し、フラワーペーストの骨格となる2つの原材料である
- 小麦粉
- でん粉
について解説します。
フラワーペーストにはこの2つのいずれか、もしくは両方が使用されています。
1.1.小麦粉

フラワーペーストは、「Flour(小麦粉)」と「Paste(ペースト)」を合わせた造語です。
語源からも分かるように、小麦粉はフラワーペーストの主要原材料です。
小麦粉は、水と加熱により粘性が生まれる性質をもちます。
この性質を応用したものが、フラワーペーストです。
1.2.でん粉

でん粉とは炭水化物の一種で、一般的には植物が光合成を行って生産し、種子、茎、根に蓄えたものを抽出したものです。
でん粉は、主に、とうもろこし、ばれいしょ(じゃがいも)、かんしょ(さつまいも)、キャッサバ、サゴ椰子など様々な原材料から生産されます。
参考:独立性法人農畜産業振興機構
片栗粉をスープのとろみづけなどに使用したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
現在、一般的に販売されている片栗粉はばれいしょ由来のでん粉です。
でん粉は、水と共に加熱すると糊のように粘り気がでる性質をもちます。
この性質を利用してフラワーペーストはペースト状の物性を得ています。
また、フラワーペーストには「加工でん粉」が使用される場合も多くあります。
加工でん粉は食品添加物に分類されます。
でん粉は上述したように植物から抽出される天然物で、それに様々な加工を施されて作られるのが加工でん粉です。
加工方法としては、次の通りです。
- 化学的な処理
- 熱や圧力を加える物理的な処理
- 酸や酵素での分解処理
これらを組み合わせ加工でん粉にすることで、使用する際にかかる機械的な力への耐性、長期保存時の品質安定などに役立ちます。
参考:独立性法人農畜産業振興機構
そのためフラワーペーストのみでなく、様々な加工食品に活用されています。
2.幅広くフラワーペーストに使用される原材料
1章でご紹介した原材料のみではほとんど味のしない、粘度のあるペーストが出来上がります。
これからご紹介する原材料は多くのフラワーペーストに使用されており、風味や使い勝手、保存性を付与します。
2.1.糖類

フラワーペーストには、皆様になじみのある砂糖以外にも、求める風味によって麦芽糖、乳糖、水飴などの糖類が使用されることがあります。
甘味の付与はもちろんのこと、フラワーペースト中の糖度を高くすることで、微生物の生育を抑制する効果があります。
2.2.油脂

油脂独特のコクや、なめらかな口どけを付与するために油脂を使用します。
バターやラードなどの動物性油脂、パーム油、菜種油、米油などの植物性油脂、これらを加工した油脂が使用されます。
開発の際はフラワーペーストに求める風味、硬さ、食感などによって使用する油脂を選択します。
例えば、弊社では
- 常温製品に使用されるものには常温下でも油じみしないよう、常温で固体の油脂
- 冷蔵製品に使用されるものにはより口どけを重視して、常温で液体の油脂
を使い分けるなどの工夫をしています。
2.3.粉乳
全粉乳や脱脂粉乳、バターミルクパウダーなどが該当します。
全粉乳:生乳や牛乳からほとんどすべての水分を除去して乾燥させたもの
脱脂粉乳:生乳や牛乳から脂肪分を取り除いたものからほとんどすべての水分を除去して乾燥させたもの
バターミルクパウダー:クリームからバターを製造する際のチャーニング(攪拌)の工程で得られるバターミルクから、ほとんどすべての水分を除去して乾燥させたもの
どれもフラワーペーストに乳の風味を付与する目的で配合しますが、それぞれ乳脂肪分やミネラルバランスが異なり、風味にも特徴があります。
またクリームとバターの副産物である脱脂粉乳とバターミルクパウダーは、全粉乳と比較すると価格が低い傾向があります。
そのため求める風味やコストなどによって使い分けを行います。
2.4.ホエイたん白濃縮物

牛乳に含まれるたん白質の一種である「ホエイたん白質」を濃縮したものです。
ホエイたん白質はヨーグルトの上澄み、チーズを作る際にでる水分のホエイに含まれます。
ホエイたん白質は
・乳化を安定化させる
・加熱により凝集する
性質をもち、これを利用するためにホエイたん白質濃縮物は幅広い食品に使用されています。
フラワーペーストにおいては、乳化安定、食感づくりのために配合されます。
2.5.増粘多糖類

植物の果実・種子や微生物の発酵産生物、海藻などから抽出される多糖類で、食品添加物に分類されます。
具体的にはローカストビーンガム(種子由来)、グアーガム(種子由来)、カラギーナン(海藻由来)などがあります。
粘性、ゲル化性を有し、食品に独特の物性を与えます。
また乳化の安定化・保水機能ももちます。
でん粉やたん白質と併用し、求める物性や食感を作ります。
2.6.保存料・日持ち向上剤

保存料とは「食品の微生物による腐敗、変敗を防止することにより、食品の保存性を向上する目的で使用する添加物」です。
- ソルビン酸カリウム
- しらこたん白抽出物
などがフラワーペーストに使用されます。
原材料表示には保存料(ソルビン酸カリウム)のように用途である保存料に物質名が併記されます。
日持ち向上剤とは「保存性の低い食品に数時間又は数日といった短期間の腐敗、変敗を抑える目的で使用される添加物」です。
フラワーペーストには
- グリシン
- 酢酸ナトリウム
- リゾチーム
などが使用されます。
日持ち向上剤は保存料と比較して効力が弱く、使用基準が設定されていません。
参考:食品興業編集部,基礎からわかる保存料・日持向上剤 現場で使える食品添加物,平成25年6月1日,p14~19
フラワーペーストの主な使用例として、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ベーカリーショップ等で常温販売されるパン・菓子などがあげられます。
これらの販売形態では製造から数日間の日持ちが必要なため、保存料や日持ち向上剤を使用して微生物による腐敗、変性を抑制します。
保存料の安全性に関して
保存料は不安視されやすい添加物の一つでもありますが、安全性を確保するために国が定めるルールに則った管理がなされています。
口から摂取する物質の安全性を科学的に評価する基準として、1日摂取許容量があります。
1日許容摂取量は人が毎日一生涯にわたり食べ続けても健康に悪影響がないと考えられる1日当たりの摂取量をいいます。
この1日摂取許容量を超えることがないよう摂取基準等が定められ、管理が行われています。
また、実際に摂取量が1日摂取許容量を超えることがないか調査が行われています。
参考:食品興業編集部,基礎からわかる保存料・日持向上剤 現場で使える食品添加物,平成25年6月1日,p18
2.7.リン酸塩
リン酸塩とはリン酸または重合リン酸(ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸)と塩類(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、第二鉄)とが結合した食品添加物です。
これらは
- pHの変化を緩やかにする作用(pH緩衝作用)
- 金属イオンと結びついて金属イオンの活動を抑制する作用(キレート作用)
などの機能をもち、食肉加工品やプロセスチーズなど幅広い加工食品に利用されています。
フラワーペーストでは主にリン酸塩のキレート作用を利用して、タンパク質の溶解を助ける目的で使用します。
参考:リン酸塩類の食品加工への利用技術について
2.8.pH調整剤
pH調整剤は、食品を適切なpH領域に保つ食品添加物です。
微生物の増殖は、pHに影響を受けます。
食品のpHを調整することは、食品の保存性を高める効果があります。
フラワーペーストにはクエン酸や乳酸などが使用される場合が多いです。
2.9.乳化剤
乳化とは本来混ざり合わない水と油脂がどちらかに分散し、均一な状態になることをいいます。
フラワーペーストは、水系部に油脂などが乳化している状態です。
もともと混ざり合わないもの同士のため、乳化状態を維持するためには補助が必要です。
この役割を果たすのが乳化剤です。
大豆などから抽出される「レシチン」や化学的に合成されたものが使用されます。
2.10.香料
バニラやミルクなど、フラワーペーストに求める風味を付与するために用いられます。
バニラなどの食品素材から抽出された天然香料や、化学的に合成されたものがあります。
2.11.着色料
植物から抽出されるものや化学的に合成されるものなどがあり、求める色調によって様々な種類の着色料を使い分けます。
カスタード味のフラワーペーストには、黄色や赤みのあるオレンジ色をもつ、カロテン色素やアナトー色素が使用されることが多いです。
3.その他の原材料|風味や種類によって様々な原材料が使用される
2章で解説した原材料は、幅広い風味のフラワーペーストに使用されるものでした。
本章では、主に風味づけのために使用され、フラワーペーストの風味に個性を与える原材料を解説します。
3.1.卵

主にカスタード味のフラワーペーストに使用されます。
卵特有のコクや甘味を付与します。
生産面・衛生面を考慮し、フラワーペーストには皆様が普段目にする卵ではなく、事前に割卵が行われ、殺菌処理が施された卵や、粉末状になった卵を主に使用します。
3.2.牛乳

カスタード味やミルク味のフラワーペーストに使用し、ミルク感を付与します。
北海道産などの産地を謳うことでフラワーペーストに付加価値を付与することができます。
3.3.チョコレート・ココアパウダー・カカオマス

チョコレート味のフラワーペーストに使用します。
カカオマスはチョコレートの原材料になる素材で、カカオ豆の胚乳(カカオニブ)をローストして磨砕したもの、ココアパウダーはカカオマスから油脂分(ココアバター)を除いて粉砕したものです。

チョコレートだけでなくカカオマス、ココアパウダーを使用することで、カカオ由来のビターな風味をフラワーペーストに付与することができます。
カカオ原料の詳細な説明についてはこちら
意外と知らないチョコレートの知識②カカオ豆からチョコレートができるまで
3.4.果汁

果物や野菜味のフラワーペーストに目的の風味を付与するために使用します。
濃縮果汁や透明果汁など様々な種類があります。
3.5.チーズ

チーズ味のフラワーペーストに使用します。
チーズは「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」に大別することができます。
ナチュラルチーズは生乳などを乳酸菌や凝乳酵素で凝固させ、ホエイの一部を除去したものです。
種類によっては熟成工程をとるものがあります。
モッツァレラチーズ、クリームチーズ、チェダーチーズなどがナチュラルチーズに分類されます。
プロセスチーズはナチュラルチーズを乳化剤などを加えて加熱して溶かし、再び成形したものです。
皆様に身近な三角形や四角形に成形され、アルミに包装されているタイプのチーズはプロセスチーズにあたります。
求める風味や製品のコンセプトによって種類や量を選択します。
弊社では様々な種類のナチュラルチーズ、プロセスチーズをフラワーペーストの原材料として使用しています。
3.6.発酵乳

主にチーズ味やカスタード味のフラワーペーストに使用されます。
皆様が発酵乳と聞くとまずイメージされるのはヨーグルトかと思いますが、チーズ様の風味をもったものなど様々な種類があります。
乳原料を発酵させることにより、旨味・香り成分が生成され、これをフラワーペーストに配合することでよりおいしさを引き立てることができます。
弊社は独自の発酵技術をもっており、バラエティに富んだ発酵乳をフラワーペーストの原材料として使用しています。
3.7.バニラビーンズシード

カスタード味やバニラ味のフラワーペーストに使用します。
カスタードクリームに黒い粒々が入っているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか?
これがバニラビーンズシードです
バニラビーンズは鞘、バニラビーンズシードは鞘の中にある種子をさします。
バニラビーンズシードを使用することで高級感をフラワーペーストに付与することができます。
3.8.植物性たんぱく質

主に、乳や卵などの動物性原料由来のたんぱく質を使用できない際に使用します。
弊社の植物性カスタード「プラボカスター/MB」には大豆たんぱく質を使用しています。
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4.実際のフラワーペーストの原材料表示を見てみよう
本章では弊社のフラワーペーストの原材料を実際に見てみましょう。
こちらは弊社のカスタード味フラワーペーストの原材料の一覧です。
発酵乳、砂糖、植物性油脂、加糖卵黄、牛乳、乳糖、脱脂粉乳、全粉乳、ゼラチン、乾燥卵白、卵黄油、/トレハロース、増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、グリシン、リン酸塩(Na)、香料、保存料(ソルビン酸K)、カロテノイド色素、安定剤(ペクチン)、リゾチーム
3章までで詳しく解説しなかった原材料を中心に解説していきます。
〇加糖卵黄
3.1.でも解説しましたが、生産面・衛生面を考慮し、フラワーペーストには皆様が普段目にする卵ではなく、事前に割卵が行われ、殺菌処理が施されたものを使用する場合が多く、弊社でもこのタイプの卵黄を使用しています。
品質安定のために砂糖が加えられています。
〇ゼラチン
お菓子作りにゼラチンを使用したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
水に溶けて冷えるとプルンとしたゲルを形成する性質をフラワーペーストでも利用します。
加工でんぷんや増粘多糖類と合わせて使用し、食感を作ります。
〇乾燥卵白
乾燥させることで粉末状になった卵白です。
加熱により凝固する卵白の性質を利用して、フラワーペーストにボディ感を付与します。
〇卵黄油
卵黄から抽出された脂質成分です。
卵のコクをフラワーペーストに付与します。
〇トレハロース
トレハロースとは甘味が砂糖の40%程度で、切れの良い甘さが特長の糖類です。
甘さ控えめなフラワーペーストを作りたいときに、砂糖などの代わりに配合します。
天然に存在し、近年は主にトウモロコシなどのでんぷんから作られています。
参考:TREHA web(ナガセヴィータ株式会社)
〇安定剤(ペクチン)
植物の細胞壁に含まれる多糖類が「ペクチン」です。
増粘多糖類の一種ですが、こちらのフラワーペーストでは、乳たん白質の凝集を抑制するなど、品質の安定化を目的として使用しているため「安定剤(ペクチン)」と表示しています。
〇リゾチーム
リゾチームは日持ち向上剤の一種です。
卵白中に存在する酵素で、細菌の細胞壁を構成するムコ多糖類を加水分解することで各種の細菌に対して溶菌作用をもちます。
参考:卵白リゾチーム(キューピー株式会社HP)
本章では実際のフラワーペーストの原材料表示から、その使用目的等を解説しました。
多くの原材料が使用されていますが、それぞれに目的があることをご理解いただけたのではないでしょうか。
5.最後に
いかがでしたでしょうか。
本記事ではフラワーペーストの原材料を
- 骨格となる原材料
- 幅広く使用される原材料
- その他の原材料
に分類してご説明しました。
これまで聞きなじみのなかった原材料の役割もご理解いただけたのではないでしょうか。
弊社でもバラエティに富んだフラワーペーストや、その他のフィリング類を幅広く取り扱っています。
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※動物性原料を含む製品と共通の設備で製造しています。
・RSPO MB認証製品です。
