パイ生地の種類って?折りパイと練りパイの違いを徹底ガイド

パイ生地を使った食べ物はおいしいですよね。
焼き立ての芳醇な香りと、何層にも重なった生地のサクサク食感がたまりません。
アップルパイやミルフィーユなどのスイーツ系から、キッシュやミートパイなどのセイボリー系まで、様々な素材と相性が良いパイ生地。

そんなパイ生地には、主に「折りパイ」「練りパイ」という種類があります。
本記事では、パイ生地の種類とそれぞれの特徴について詳しく説明していきます。

1.パイ生地の基本:「折りパイ」と「練りパイ」の違い

パイ生地は大きく「折りパイ」と「練りパイ」の2種類に分類されます。
最大の違いは、生地に油脂を合わせた後に「生地を伸ばして折りたたんで、層を作る工程があるかどうか」です。

油脂を合わせた後に生地を伸ばして折りたたむ工程があるのが「折りパイ」折りたたまないものが「練りパイ」です。

パイ生地の種類

1.1.折りパイは「生地を伸ばして折りたたんで層にする」 

折りパイは、生地と油脂が層状になるように折りたたんで作るパイ生地です
油脂を合わせた生地を、薄く伸ばして折りたたむという工程を何度も繰り返すことで、生地と油が薄い層になります。
加熱すると生地が膨らんで、綺麗な層状に焼き上がるため、パイ特有のサクサクとした層が感じられる食感に仕上がるのが特徴です。

一般的に「パイ生地」というと、この「折りパイ」のことを指すことが多いようです。

折りパイ

1.2.練りパイは「生地を折りたたまずに作る」

練りパイは、油脂を生地に練り込んで作るパイ生地です。
材料を混ぜ合わせるだけでできるため、折りパイよりも手軽に作ることができます。

折りパイのように、生地を伸ばして折りたたむ工程が無いため、層にはなりません。
折りパイと比べて焼き上がりのブレが少なく、しっとりクッキーのような食感に仕上がり、キッシュやタルトの土台として使われることが多い生地です。

そのため、練り”パイ”と呼ばれていますが、お菓子作りの本などでは「タルト生地」として紹介されることもあります。

※参考資料:リリエンベルグ 横溝春雄「お菓子とケーキ おいしい生地の基本」,成美堂出版,2012年11月

 練りパイ

 

2.折りパイは「油脂の合わせ方の違い」で3種類

折りパイは「生地と油脂を合わせた後に、生地を伸ばして折りたたむ」と説明しましたが、さらに「油脂の合わせ方」の違いで3種類に分けられます。

折りパイ
「フィユタージュ・ノルマル」
逆折りパイ
「フィユタージュ・アンヴェルセ」
速成折り込みパイ
「フィユタージュ・ラピッド」
油脂の合わせ
(パイ生地の作り方)
生地油脂を包んで折りたたむ 油脂で生地を包んで折りたたむ カットした油脂を生地に混ぜ込んで折りたたむ
食感・見た目 サクサク食感
綺麗な層ができる
はらはらとした繊細な食感
綺麗な層ができる
ややサクサク食感
ランダムな層ができる
作業の難易度 ★★☆ ★★★ ☆☆

2.1.折りパイ「フィユタージュ・ノルマル」

フィユタージュ・ノルマルは、最も基本的な折りパイの作り方です。
生地で油脂を包んだ後、薄く伸ばして折りたたむという工程を繰り返して層を作ります。

生地に包む油脂(折り込み用の油脂)は、シートバターやシートマーガリンなど、板状になっているものが使われます。
ブロック状の油脂を綿棒などでたたいてのばし、板状にしてから使うこともあります。

生地で油脂を包んで折りたたむ工程があるため、やや手間はかかりますが、サクサクとした食感になり、焼き上がりも綺麗な層ができます。

アップルパイやミルフィーユなど、パイの層の食感を楽しみたいアイテムにおすすめです。

折りパイ「フィユタージュ・ノルマル」生地断面のイメージ

 

2.2.逆折りパイ「フィユタージュ・アンヴェルセ」

フィユタージュ・アンヴェルセは、生地で油脂を包むのではなく、油脂で生地を包むという特殊な作り方です。
生地を包んだ後は、薄く伸ばして折りたたむという工程を繰り返して層を作ります。

「アンヴェルセ」とは、フランス語で「逆さま」を意味します。
通常の折りパイ(フィユタージュ・ノルマル)とは異なり、生地と油脂を逆にして包むことから、日本語では「逆折りパイ」と呼ばれています。

外側に油脂がくるため、焼くと揚げられたような状態になり、通常の折りパイと比べてはらはらとした繊細な食感に仕上がります。
また、フィユタージュ・ノルマルと同様に綺麗な層ができます。

パイ生地の食感やおいしさにこだわりたいという時に特におすすめです。

油脂が外側に来るため、折り込み時は生地がべたつきやすく、熟練した技術が必要になります。
そのため折りパイ3種類の中で作業の難易度が一番高く、プロのパティシエが使う製法です

逆折りパイ「フィユタージュ・アンヴェルセ」生地断面のイメージ

2.3.速成折り込みパイ「フィユタージュ・ラピッド」

フィユタージュ・ラピッドは、細かく刻んだ油脂を生地にざっくりと混ぜ込んだ後、生地を伸ばして折りたたむという工程を繰り返して層を作ります。
油脂を包む手間が無いため、短時間で作ることができるのが特徴です。

「ラピッド」とはフランス語で「速い」という意味で、この作り方は日本語で「速成折り込みパイ」と呼ばれます。

混ぜ込んだ油脂は生地中に点在しており、生地を伸ばして折りたたむことで、油脂が押しつぶされて薄く広がり、油脂と生地が断続的に連なったような状態になります。

前述した他の折りパイと比べると、ランダムな層になり、焼き上がりは安定しやすいという特徴があります。

そのため、アップルパイの底生地など薄く焼き上げるアイテムにおすすです。

速成折り込みパイ「フィユタージュ・ラピッド」生地断面のイメージ

 

3.練りパイは「配合・作り方の違い」で3種類

練りパイは、配合や作り方の違いで3種類に分けられます。

甘い&ホロホロ食感
「パート・シュクレ」
甘い&一番ホロホロ食感
「パート・サブレ」
甘くない&サクサク食感
「パート・ブリゼ」
配合
(砂糖の使用有無)
砂糖あり 砂糖あり 砂糖無し
(または少量)
基本の作り方 卵・油脂・砂糖を混ぜて、クリーム状にしてから小麦粉を加える 油脂と小麦粉をすり合わせてサラサラな状態にした後、卵や水を加える 油脂と小麦粉をすり合わせてサラサラな状態にした後、卵や水を加える
食感 ややホロホロ食感 3種類の中で一番ホロホロ食感 サクサク食感
おすすめの用途 フルーツタルトなどのスイーツ系のアイテム タルトなどの底生地や、型抜きして焼いてクッキーとして キッシュなどの甘くないアイテムや、生地の甘さを抑えたいアイテム

 

3.1.甘い&ホロホロ食感「パート・シュクレ」

パート・シュクレは、砂糖を加えて作ホロホロとした食感の甘い生地です。

「シュクレ」とはフランス語で「砂糖」を意味します。
卵・油脂・砂糖を混ぜてクリーム状にした後に小麦粉を加えるという作り方によって、ホロホロとした口どけの良い食感に仕上がります。
また、砂糖を多く使用しているため焼き色が付きやすいという特徴もあります。

生地自体に甘さがあるため、具材の甘さが控えめで生地の風味を活かしたい時やフルーツタルトなどスイーツ系のアイテムにおすすめです。

パート・シュクレのイメージ写真

 

3.2.甘い&一番ホロホロ食感「パート・サブレ」

パート・サブレは、パート・シュクレと同様に砂糖を加えて作られ、3種類の中で一番ホロホロとした食感の甘い生地です。

「サブレ」とはフランス語で「砂」を意味します。
その名のとおり、油脂と小麦粉をすり合わせてサラサラな状態(砂のような状態)にした後に、卵や水を加えるという作り方をします。
砂糖・卵・油脂の配合量が多く、風味が良いという特徴もあります。

そのため、タルトの底生地として使われる以外にも、型抜きして焼いてそのまま食べるクッキーなどにもおすすめです。

パート・サブレのイメージ写真

 

3.3.甘くない&サクサク食感「パート・ブリゼ」

パート・ブリゼは、砂糖を加えない(または少量だけ加えて)作るサクサク食感の生地です。

「ブリゼ」とはフランス語で「砕けた」という意味で、パート・シュクレと比べると、崩れにくく固めでサクサクとした食感です。
パート・サブレと同様に、油脂と小麦粉をすり合わせてサラサラな状態にした後に、卵や水を加えるという作り方をします。

生地自体の甘さが無いため、素材の味を引き立てる素朴な味わいが特徴です。
キッシュや甘くないタルト・パイの土台によく使われます。
また、チョコレートタルトなど具材の甘さが強い時に、全体の甘さのバランスをとりたい時にもおすすめです。

パート・ブリゼのイメージ写真

 

4.最後に

一言でパイ生地といっても、折りパイや練りパイと呼ばれるものがあり、さらに配合や作り方によってもたくさんの種類があるということをご理解いただけたでしょうか?

パイ生地を作ってみたいと思った方は、用途や求める食感・風味に合わせて使い分けをしてみてください。
自分で作るのは難しそうと思った方は、冷凍生地を活用するのも一つの方法です。

当社では、折りパイの中でも難易度が高い逆折りパイ「フィユタージュ・アンヴェルセ」をはじめ、さまざまな種類の冷凍生地を取り扱っています。

ちなみに当社では、本記事で説明した折りパイのことを「パイ生地」、練りパイのことを「タルト生地」として分類しています。
また、「フィユタージュ・ラピッド(速成折り込みパイ)」は「練りパイ」として分類しています。

これらをまとめたのが以下の表です。

パイ生地の種類 本記事での分類 当社での分類
フィユタージュ・ノルマル 折りパイ(通常) 折りパイ(通常)
フィユタージュ・アンヴェルセ 折りパイ(逆折りパイ) 折りパイ(逆折りパイ)
フィユタージュ・ラピッド 折りパイ(速成折り込みパイ) 練りパイ
パート・シュクレ 練りパイ
(甘い&ホロホロ食感)
タルト生地(シュクレタイプ) 
パート・サブレ 練りパイ
(甘い&一番ホロホロ食感)
タルト生地(サブレタイプ)
※個別対応
パート・ブリゼ 練りパイ
(甘くない&サクサク食感)
タルト生地(ブリゼタイプ)
※個別対応

代表的なパイ記事

タイプ別 当社冷凍生地製品のご紹介(一例)

 

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※参考文献

  • (協)全日本洋菓子工業会「洋菓子概論」1997年4月,2版
  • 中山弘典・木村万紀子 監修 辻製菓専門学校「科学でわかるお菓子の「なぜ?」」柴田書店 2011年8月,6版
  • エコール・キュリネール国立「よくわかるお菓子づくり基礎の基礎」柴田書店 2005年7月,4版
  • 辻製菓専門学校 中山弘典「プロをめざす人のために 基礎から学ぶフランス菓子 第2巻」柴田書店 2001年2月,4版
  • 大阪あべの辻製菓専門学校 川北末一「プロのためのわかりやすいフランス菓子」柴田書店 2004年4月

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