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生クリームを超えたホイップクリームを目指して

ホイップクリームと生クリームの関係は、マーガリンとバターの関係によく似ています。
マーガリンが植物油脂でバターを再現したように、ホイップクリームも植物油脂を主体に
生乳由来の生クリームを模した“代用品”として位置づけられてきました。

しかし私たちは、その枠にとどまらず――ホイップクリームを単なる代用品ではなく、
生クリームのおいしさすら超える新たなクリームへと進化させられないか。
そうした挑戦に、今も取り組み続けています。

  1. ホイップクリームと
    生クリーム

    ホイップクリームは、植物油脂をベースにした食品であり、撹拌して空気を抱え込むこと(ホイッピング)で、ケーキやデザートでお馴染みのふわふわのクリームになります。ホイップクリームは、生クリームより価格が手頃なだけでなく、ホイッピングも容易なため、食品業界で長らく重宝されてきました。

    しかし、生クリーム特有のシャープな口どけや、爽やかさと濃厚さが両立する豊かな風味までは、ホイップクリームでは再現しきれていませんでした。

  2. 生クリームを超える
    ホイップクリームを作りたい

    月島食品は、1980年にホイップクリームの開発・製造を始めています。ホイップクリームの原料は、ヤシやパーム油などの植物油脂であり、そこに香料等を用いて生クリームの味付けを行います。しかし、既存の原料を単純に組み合わせただけでは、月島食品の独自の「おいしさ」を打ち出すには限界がありました。

    そこで2010年ごろ、月島食品のこれまで培った油脂加工や発酵による素材開発力を組み合わせることで、生クリームの口どけと風味を兼ね備えたホイップクリームを開発するプロジェクトが立ち上がりました。

  3. 生クリームの
    口どけを再現する

    生クリームの口どけは何がもたらすのでしょうか?その答えは、生乳に含まれる乳脂肪の脂肪酸にあります。油脂の口どけとは、乳脂肪を口に含んだときに溶け出すタイミングによるものであり、それは油脂を構成する脂肪酸によって決まります。

    私たちは、乳脂肪がどのような脂肪酸によって構成されているかを分析機器によって把握し、それを再現できるように、植物油脂を独自の割合でブレンドしました。

    このような配合の工夫によって、乳脂肪と同様の物理的性質を示す油脂を生み出すことに成功し、植物油脂ながら生クリームのようなシャープな口どけを実現したのです。

  4. 発酵素材による
    生クリームの香り

    生クリームの香りは、牛の体内で脂肪酸などが「発酵」することで生まれます。

    私たちは、生クリームの香りを構成する成分を最新機器で測定し、その香りに深く関わる“キー成分”を特定しました。そして、その香り成分を引き出すために素材や発酵条件を検討し、フレッシュな生クリームの香りを呈する独自の発酵素材を開発しました。

    こうして完成したホイップクリームは、乳脂肪のようになめらかで、奥行きのある香りを実現しています。さらに、油脂の配合量が生クリームより低いために軽やかで口あたりがよく、思わず“ぱくぱく”と食べ進めたくなる味わいに仕上がりました。

    こうして生まれたホイップクリームは、今でも月島食品の基幹製品であり、毎日多くの洋菓子に使われ続けています。