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シュークリームを日常に――月島食品がかなえた大量生産

シュークリームは今や、コンビニやスーパーで気軽に買える定番スイーツです。
しかし本来は、熟練のパティシエが手作業で焼き上げる繊細なお菓子でした。
シュークリームの普及の立役者が、月島食品が開発した「シューパフ(シュークリームの皮)用油脂」です。
生地づくりを安定させ、大量生産を可能にしたことで、
ふわりと軽やかなシュークリームをいつでも楽しめる時代を切り拓きました。

  1. 洋菓子の現場から生まれた
    製品アイデア

    1960年代後半、日本の経済成長に伴って洋菓子の需要が急速に拡大しました。月島食品も規模を広げながら、時代のニーズに応える製品開発を進めていった時期でした。

    私たちは洋菓子の現場を熟知する職人を仲間に迎え入れることで、実店舗が抱えるリアルな課題の解決に取り組みます。そこで、シュークリームは人気商品でありながら焼成が難しく、パフの大きさがそろわず大量の食品ロスが発生しているということを知りました。

    この課題を解決するため、月島食品はシューパフを安定して焼き上げる「シューパフ用油脂」の開発に着手しました。

  2. シューパフが膨らむ仕組み

    シューパフが、風船のように内側が空洞になって膨らむ理由は、原料の水分から発生する蒸気が、生地を内側から押し広げるためです。

    シュー生地(パータ・シュー)は、水、バター、小麦粉、卵などの原料で作られます。オーブンに入れると、生地内の水分が加熱で蒸発し、水蒸気になりますが、シュー生地が風船のように水蒸気を抑え込みながら伸びることで、生地が大きく膨らみます。

    やがて加熱が進むと、生地の表面が乾いて固まり、中が空洞のまま形が固定されます。シュー生地の分量や仕込みを間違えると、生地から水蒸気が逃げたり、逆に膨らまなかったりするため、ボリュームのあるシューパフを作ることは熟練のパティシエでないと難しかったのです。

  3. シュークリームが膨らむ仕組み

    乳タンパクを活かした
    シューパフ用油脂の開発

    シューパフを美しく焼き上げるには、生地がしっかりと伸びる「しなやかさ」と、水蒸気を安定して抑え込む「強さ」の両立が必要です。そこで月島食品が注目したのが、牛乳などの乳製品に一般的に含まれる「カゼイン」というタンパク質でした。

    カゼインは加熱してもすぐに固まらず、適度な粘性を保ったまま膜を形成する性質があります。この性質により、生地が風船の膜のように水蒸気を逃さず抱え込めるようになり、生地の膨らみをしっかりと支える役割を果たします。こうしたカゼインの特性を活用することで、熟練者でなくともシューパフを安定して大きく膨らませることができるようになりました。

  4. 当時のシューパフ用油脂マニュアル

    今も続く
    シューパフ用油脂の進化

    こうして完成したシューパフ用油脂は、1時間に数千個ものシューパフを焼き上げるという、かつてない効率と安定性を実現しました。従来の作り方とはまったく異なる新しい技術だったため、お客様には丁寧なマニュアルをお届けし、新たなシューパフ作りの世界をご提案しました。

    月島食品のシューパフ用油脂は、今もなお主力製品のひとつとして、食感や風味、仕上がりにさらなる磨きをかけ続けています。

    ふだん何気なく口にしているシューパフ。その一つひとつに、長年の工夫と挑戦が詰まっています。ぜひ一度、じっくりと味わってみてください。